トランプの自動車関税政策で迫り来るスタグフレーションの危機
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トランプ大統領の新たな自動車関税政策が米経済に与える影響を分析。25%関税導入による株価下落や自動車業界への打撃、そして迫り来るスタグフレーションの危険性について解説します。金融市場は警戒感を強めています。
2025年3月31日号
先週の金融市場は、相変わらず『Tariff man』トランプの言動にビクつきながら、恐る恐るの取引に終始したが、週を終えてみると為替市場では主要通貨は対ドルで小動きとなったが、米長期金利の下落にも拘わらず株価は大きく下落し、一部ではアメリカはスタグフレーション(不景気の中での物価上昇)に陥るのでのではないかとの不安が広がり始めた。
通貨・銘柄 | 3月24日 | 3月28日 | 変化 |
---|---|---|---|
ドル円 | 150.68 | 149.84 | -0.6% |
ユーロドル | 1.0800 | 1.0830 | +0.3% |
ポンドドル | 1.2923 | 1.2943 | +0.2% |
豪ドルドル | 0.6286 | 0.6288 | +0.0% |
米10年債利回り | 4.338% | 4.253% | -0.085% |
NYダウ | 42,583.32 | 41,583.90 | -2.3% |
ナスダック | 18,188.59 | 17,322.99 | -4.8% |
S&P | 5,767.57 | 5,580.94 | -3.2% |
週初こそ、4月2日発動の相互関税について、一部の国・地域を除外する可能性が示唆されたことで、リスク・オンの動きとなり、債券が売られて長期金利、そして株価とドルの何れも上昇したが、Tariff manトランプが米国に輸入される乗用車やスポーツ用多目的車などのライトトラックに最大25%の関税を課す計画を発表すると、急激にリスク・オフの動きとなって週初とは真逆の動きとなり、長期金利、株、そしてドルが下落することとなった。
関税により、「Make America great again !」(アメリカを再び偉大に!)と叫ぶTariff man.にとってこの大幅な株価の下落は想定外のことであったかも知れないが、この御仁、余り後先の事を考えないで兎に角関税だけに突っ走っている感が有る。
興味深いのは、25%の関税を課す計画を発表した途端にアメリカの大手自動車メーカーの株価が軒並み下落したことである。
Tariff manの思惑は、輸入車に対して高率関税を課すことによって国内メーカーの競争力を強化して売れ行きを伸ばそうと思ったのだろうが、この25%の関税は完成車だけではなく部品にも課せられる。
何と、アメリカ製の自動車のエンジンの凡そ80%が海外で作られており、実はアメリカの自動車メーカーももろにこの新たな25%の関税の被害者となったのだ。
そして Tariff manは、アメリカの自動車メーカーのトップに電話をして、「輸入車に対しての25%の関税賦課に乗じてお前らが売る車の値段を上げたら、黙っていないぞ!」と脅しを掛ける。
訳が分からない。
この25%の新たな関税は、対米輸出の3割弱を自動車が占める日本経済へ大きな打撃を与える事であろうが、実はアメリカ自身も相当な打撃を受けるであろうことをTariff man.は理解していないのであろう。
このままでは、「Make America great again !」(アメリカを再び偉大に!)どころか、「Make America in trouble.」(アメリカを困らせる)と言う事になるのが関の山であろう。
25%関税は自動車業界のみならず、一般のアメリカ人にも大きな影響を与える。
関税は基本的には輸入者側が負担することになり、アメリカの自動車ディーラーは今まで2万ドルで売っていた優秀な日本車の売値を2万5千ドルに引き上げざるを得ない。
一般消費者が、あっと言う間に5千ドルも値上がりした車を直ぐに買うか?
恐らくアメリカでの自動車販売数は劇的に減少するであろう。
それでなくてもアメリカの消費者は徐々に財布の紐を固めつつあり、2月の個人消費支出やミシガン大学消費者信頼感指数などの、個人消費に関連する経済データが市場予想を下回った。
アメリカ経済のスローダウンの足音が消費サイドからひたひたと聞こえ始めた。
同時に、利下げに踏み切ったFRBが最も気にする物価にも気になる兆候が見え始めた。
先週、米商務省が発表した2月の個人消費支出(PCE)価格指数は、前年比2.5%上昇し、市場予想と一致したものの、米経済の3分の2以上を占める個人消費が予想を下回る回復にとどまるとともに、基調的な物価圧力の高まりが示された。
また、米ミシガン大学が28日発表した消費者調査で、5年先の期待インフレ率は4.1%と、1993年2月以来の高水準となった。
2021年、2022年と米消費者物価指数(CPI)が一時的に9%に達した時でさえ、5年先の期待インフレ率は3%前後であったことを考えると、如何に消費者がトランプ関税の結果、インフレが高進するであろうとの危惧を抱いている事が分かる。
このままでは、トランプ関税によるインフレ率上昇と景況感悪化という『スタグフレーション』への警戒感が益々増えても不思議ではなかろう。
ドルは買えない。
シカゴ・IMMの投機筋が頑なに円・ロング(ドル・ショート)のポジションを保持している理由が分からないでもない。
先週の3月25日時点で、前週から凡そ1円50銭ドル高&円安が進んだ事に乗じて再びドルの売り持ちを、僅かではあるが凡そ1億ドル増やしている。
我が国個人投資家のポジションは変わらずで、約9億ドルの買い持ちを保持している。

個人投資家残高
前週 | 3月17日付け | 比較 |
+9億ドル | +9億ドル | 0 |
@148.60 | @149.32 | +0.72 |
シカゴ・IMM
前週 | 3月18日付け | 比較 |
-103億ドル | -104億ドル | -1億ドル |
@149.17 | @150.68 | +1.51 |
今週は4月2日にTariff man.が注目の相互関税を発表する。
上述した様にドルは買えないのだが、4月2日前後に市場最大規模の円・ロング(ドル・ショート)を保持するシカゴ・IMMが、「Buy on rumor, sell on fact.」(噂で買って事実で売れ)に則って円を売り戻す行動に出ても不思議ではないと思っている。(あくまでも個人的憶測である)
再び150円超える様であれば、再び、いや数度目のドル売りの良いチャンスとなる事であろう。
今週のテクニカル分析の見立ては、148.00~151.00のレンジを下に破れば更なる下落、上に破れば更なる上昇を見る。レンジ取り引きか?
今週のレンジ
ドル円:148.00~151.00
ユーロ円:160.00~163.00



酒匂隆雄 (さこう・たかお)
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
公式ブログ:酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」
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