酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

一時的なトリプル高

2025/04/28

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トランプ大統領の朝令暮改な関税政策に振り回される為替市場。一時的なトリプル高に転じたドル円相場ですが、日米財務相会談の裏側と真の狙いは何か?今後のドル安・円高の可能性を分析します。

2025年4月21日号

先週のドル円相場は、週初こそ前週までのトリプル安(株安、債券安=金利高、ドル安)の流れを引き継ぎ、一時、昨年10月以来の安値となる139.89を付けたが、その後、トランプ大統領がパウエルFRB議長の罷免要求を撤回したり、トランプ政権が対中関税について、国家安全保障上の脅威とみなされない品目には35%の関税を課す一方、脅威とみなされる品目には100%以上の関税を課す段階的なアプローチを検討しており、結果として中国に対する関税率は全体で50~65%程度になるという、中国に対する強硬姿勢を緩和するとの観測が流れたことを受け、大きく値を戻し、直ぐに143円台を回復することとなった。

相変わらず、「Tariff man」トランプの朝令暮改というか、行き当たりばったりの関税政策には呆れるばかりであるが、トランプが「習近平首相との会話を含め、中国との交渉が進んでいる」と嘯く中、中国政府は「米国製品の一部に対する関税免除について詳細は把握していない。中国と米国は関税に関する協議や交渉を行っていない」と否定し、まるで騙し合いである。

このようなやり取りに右往左往させられるのはかなわないが、市場は株、債券、そしてドルの買い戻しに走り、トリプル高(株高、債券高=金利安、ドル高)で週を終えることとなった。

そんな中、注目の日米財務相会談が行われた。

市場の一部(筆者を含め、大手米銀のレポート)では、大幅なドル安を狙った為替調整(Mar-A-Largo Agreement)や、円の20%程度の円高方向への調整を含めた決定が発表されるとの期待があったが、結果はベッセント財務長官の「特定の通貨目標を求める考えはない」、そして加藤財務相の「米国から為替水準の目標や、それに対する枠組みの話は全くなかった」とのコメントで、対円でのドルの買い戻しが続き、週末金曜日には144.03の高値を付けた後、143.73で週を終えた。

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全く個人的な意見であるが、この両財務相のコメントは俄かには信じ難い。

どこまで突っ込んだ話があったかは不明であるが、為替の話がなかったはずはない。

加藤財務相の会談後の「為替について日米で緊密かつ建設的に協議を続けていくことで一致」というコメントが肝である。

要するに、日米間の為替協議は終わっておらず、引き続き為替の話を続けていくと言っているのである。

なぜトランプ政権は朝令暮改の政策を行い始めたのか?

それは、当初の無茶苦茶な恫喝関税政策でトリプル安という金融市場の大混乱を招き、穏健派のベッセント財務長官が「Tariff man」を諫めた可能性が高い。要するに、一時停戦である。

「Tariff man」トランプは、日米財務相会談後も相変わらず「円は弱過ぎる」とツイートしているが、
いつまで大人しくしているか、興味深いところである。

土曜日、興味深いことがあった。

日経新聞朝刊の1面には為替関連の記事は一行も載っていなかったが、読売新聞の1面のトップ記事には「米、ドル安・円高を望む」と大きな文字が躍った。

記事は、日米財務相会談に関して「ベッセント氏はドル安・円高が望ましいと述べ、トランプ大統領の意向に沿って為替水準への強い懸念を表明した模様だ」と言い切り、今後の協議で米国の対応について予断を許さないと書いている。

どうして読売新聞がこのような断定的な記事を書いたかは不明だが、個人的には「そうだろうなあ」と同調する。

またまた、騙し合いか?

余談であるが、当時の竹下登大蔵大臣は1985年のプラザ合意に出席するためにニューヨークに発つ際、記者の目を眩ますためにゴルフウェアを着て家を出たと言われている。

あたかもゴルフに出掛けるふりをして、G5による初めての協調介入について討議するためにニューヨークに出掛けたのである。

さらに余談であるが、昔から中央銀行・財務(大蔵)省は金融・為替政策に関して「市場に嘘を付いても構わない」という言い伝えがある。

要するに、本当のことを言ってしまうと市場が先走って政策変更の効果が薄れるので、本当のことは明かさないし、それは筆者自身、彼らとの付き合いを通して経験してきた。

ご当局は「騙し合い」がお好きなのである。

筆者は相変わらず、アメリカは対ドルでの円高進行を望んでおり、それは我が国政府の意向とも相反しないと思っている。

もっとも、アメリカのスタグフレーション懸念や、「Tariff man」トランプが2期目を開始した1月20日から4月25日までに約9%下落し、少なくとも1973年以降で最大の下げとなる見通しとなったドル指数などを見て、現在ドル資産を保有するSovereign(各国政府や政府機関)からのドルからの脱却の動きが進み、ドルは対円のみならず全ての通貨に対しても下落するのではないかと思っており、放っておいてもドル安&円高が進む可能性が高いと思っている。

毎週同じデータをお見せして恐縮であるが、シカゴIMMは未だ考えを変えていない模様である。

前週の143円台から140円台にドル安&円高が進む中、さらに8億ドルのショートポジションを増やして、4月22日付で158億ドルのショートポジションを保持している。

そして我が国の個人投資家は、143円台から142円台にドル安&円高が進む中、3億ドルのロングポジションを増やして、4月21日付で16億ドルのロングポジションを保持している。

相変わらず、両者の相反する相場観の違いに驚くばかりである。

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個人投資家残高

前週4月14日付け比較
+13億ドル+16億ドル+3億ドル
@143.56@142.13-1.43

シカゴ・IMM

前週4月15日付け比較
-150億ドル-158億ドル-8億ドル
@143.05@140.88-2.17

今週のテクニカル分析の見立ては、143.50のレジスタンス(上値抵抗線)を上切ったことで、ドルの短期的上昇を見るが、深追いは禁物。

今週のレンジ

ドル円:140.50~144.50
ユーロ円:161.00~165.00

酒匂隆雄

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


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