酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

酒匂隆雄の為替ランドスケープ 2025年03月17日号

2025/03/17

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トランプ大統領の「Tariff Man」としての強硬姿勢に市場が揺れる中、日本は鉄鋼・アルミへの25%関税に対し報復する術を持たない。今週の日銀とFOMCの決定会合を前に、為替市場は警戒感を強めている。

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我が国は、為す術無し

先週も、市場はTariff Manトランプの発言に翻弄され、為替、株式、債券市場は落ち着きの無い動きに終始した。

為替市場では、対主要通貨では小動きで終わったドルは、対円では安値146.55から149.19迄上昇して、ドル高&円安が進んだ。

ニューヨーク株式市場では、ダウが週初の41,911.71ドルから一時2.6%安の40,813.57ドル迄下落した後、金曜日は一気に1.7%値戻して41,488.19ドルで週を終え、ナスダックとS&Pは僅かに値を上げて終えるなど、まちまちの展開となった。

債券市場では米10年債利回りが4.218%から4.319%へと上昇する中、我が国の10年債利回りは1.570%から1.515%まで下落して日米金利差が広がったことがドル円相場の上昇を誘ったものと思われる。

トランプ大統領は、「私にとって辞書の中で最も美しい言葉は、タリフ(関税)だ。」と公言して日本を含む友好国にまで関税を武器にして見返りを求めるが、お互いの関税の報復合戦により結局はアメリカにも物価上昇による将来的なインフレ懸念などの『都合の悪い事』には目もくれない。

名門ペンシルヴェニア大学・ウォートン・スクールで学位を取った『元』秀才とは思えぬ愚行だと思う。

頭が良いから、質が悪いとも言える…. (頭が悪い奴は、何とか御する事が出来るが、頭の良い奴にはこっちがやられることが有る)

突然関税を掛けられたカナダ、メキシコ、EU、そして中国は少なくともアメリカからの輸入品に対して同率、或いはより高い関税を掛けると報復を宣言したが、情けないのは我が国である。

既に鉄鋼製品とアルミニウムに25%の関税を掛けられ、どうやら次は自動車にも25%の関税を掛けられそうな我が国は、報復する術を持たない。

それどころか、トランプは「日本などが通貨を下げると我々に非常に不公平な不利益をもたらす。関税は迅速かつ効率的に公平性をもたらす。」と語って、円安是正と関税の二つの圧力を掛けている。

そして、現在のところ残念ながら我が国は為す術を持たない。

そう言った事情を見透かせてか、シカゴ・IMMの投機筋は円買いの手を緩めない

ドル円相場が前週の終値ベースで149.82から147.76へと2円強ドル安&円高が進む中、僅かではあるがドルの売り持ちを増やして、先週3月11日の段階で-114億ドルのポジションを保持している。

それと好対照なのが我が国個人投資家の行動で、此方は前週の149.49から147.29へと2円強ドル安&円高が進む中、3月10日の段階で5億ドル買い増して+13億ドルのポジションを保持している。

溜息が出そうである。

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個人投資家残高

前週3月10日付け比較
+8億ドル+13億ドル-5億ドル
@149.49@147.29-2.20

シカゴ・IMM

前週3月4日付け比較
-111億ドル-111億ドル-3億ドル
@149.82@149.82-2.06

今週は、日銀政策決定会合とFOMC.が3月18日~20日の同じタイミングで開催されるが、市場は両者共に政策金利の変更は無しと見る。

但し、市場は会合後の植田総裁とパウエル議長の記者会見に大いに関心を持つ。

先週、我が国では第一回目の春闘の集計結果が発表されたが、定昇込み全体の賃上げ率は5.46%、定昇を除くベアの賃上げ率は3.84%と市場予想を上回り、日銀にとっては追加利上げの後押し材料となった。

トランプからの円安是正の圧力とも相まって、植田総裁は全体的にはタカ派的(金融引き締めに積極的)なトーンの会見を行い、5月か6月の追加利上げに向けての前向きな発言が行われると期待する。

先週発表された2月の米国CPI(消費者物価指数)とPPI(生産者物価指数)共に前月から着実に下落しており、パウエル議長からは追加利下げを後押しする様な発言を期待したいが、トランプ関税による今後の物価への影響も鑑みて、現状維持のスタンスを表明するのであろう。

CPIPPI
2024年03月3.50%1.80%
2024年04月3.40%2.30%
2024年05月3.30%2.40%
2024年06月3.00%2.70%
2024年07月2.90%2.10%
2024年08月2.50%1.90%
2024年09月2.40%1.90%
2024年10月2.60%2.60%
2024年11月2.70%3.00%
2024年12月2.90%3.50%
2025年01月3.00%3.70%
2025年02月2.80%3.20%

ここ数週間、ドル円相場は146円~152円のレンジ内に留まっているが、シカゴ・IMMの空前規模の円の買い持ち(ドルの売り持ち)ポジションには、敬意を表しながらも(?)多少警戒したい。

円の買い持ち(ドルの売り持ち)ポジションを保持していると、日米短期金利差(約4.2%)をスワップ・コストとして毎日払わなくてはならず、ポジションを長く持てば持つ程、冷酒の様に効いてくる。

シカゴ・IMMは円の買い持ち(ドルの売り持ち)ポジションをひと月以上保持しているから、単純計算で149円×4.2%×ひと月÷12ヶ月≒52銭以上を支払っていることになる。

ひと月52銭のコストが大きいか、小さいか?

5円以上のCapital Gain(売却差益)のドル安&円高を狙っているのでは、まあ大したことはないが、悪いAverage(平均レート)のドル・ショート・ポジションを保持しているのでは、52銭は痛い!

日銀政策決定会合とFOMC後に多少のドルの戻しが有っても不思議ではなく、ドルが短期的に上がれば、寧ろ絶好のドルの売り場になるのではなかろうか?

今週のテクニカル分析の見立てはトレンドは依然として下を目指すものの、多少ドルの売られ過ぎに警戒したい。

今週のレンジ

ドル円:147.00~150.00
ユーロ円:158.00~163.00

酒匂隆雄

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


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