酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

酒匂隆雄の為替ランドスケープ 2024年12月号

2024/12/02

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2024年、金融市場は専門家の予想を大きく覆す、激動の一年となった。年初に65名の著名アナリストが予測したドル・円相場の展望は、米国経済の堅調さや金融当局の慎重な政策対応により、見事に裏切られることとなった。1月に150円近辺で始まった円相場は、年央には160円を超える展開となり、市場参加者に驚きと戸惑いをもたらした。本稿では、2024年の通貨市場を振り返り、その予想外の変動の背景に迫る。

2024年を振り返って

今年も残すところあとひと月となった。

この1年を振り返ってみると相変わらず一筋縄では行かない難しい相場展開となった感が強い。

年初、2024年はアメリカの景気減速及びインフレ鈍化傾向を背景にFRBが利下げを進め、我が国ではデフレ脱却・物価安定を背景に日銀が利上げを進めて、その結果日米金利差が縮小して1年を通じてドル円相場はなだらかにドル安&円高が進行するであろうとの意見が大半を占めた。

毎年恒例の金融専門誌・日経ヴェリタスが2023年12月30日に公表した、65名の著名アナリストによる2024年のドル・円相場の高値と安値、そしてそれが何月に起きるかのサーベイの集計を振り返ってみると、圧倒的多数の32名が1月に高値を見るとしており、65名の高値の平均値は149.14であった。

そして圧倒的多数の37名が12月に安値を見るとしており、65名の安値の平均値は131.10であった。

これをまとめると、著名なアナリストの方々は2024年のドル円相場は年初1月に150円に近い高値を付けた後、日米金利差縮小を背景にドル安&円高が進み、年末の12月に130円に近い安値を付けるであろうとの予想を行った訳である。

筆者も似た様な相場観を持っていた。

そして実際のドル円相場の動きは、これら言わばプロとも言える人達のご託宣とは似ても似つかないものとなったのである。

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(2024年1月から11月末までのドル円相場・週ローソク足)

ドル円相場は年初1月2日に140.84で始まり、これを安値としてじりじりとドル高&円安が進んで7月4日には年の高値161.94を示現した。

我が国財務省はドル高&円安進行を阻止する為に4月から7月に掛けて総額15兆円(凡そ950億ドル)にも上る円買い&ドル売り介入を行い、それが功を奏して9月17日には今年の安値となる139.58を付けたが、その後はトランプ氏が次期大統領に選ばれたことを受けて株高、金利高、そしてドル高と言う所謂トランプ・トレードなるものが台頭して11月に入るとドル円相場は再び155円を超えるドル高&円安相場となった。

大方の2024年のドル円相場予想が外れた理由は、市場が明らかに日米金融当局の政策変更の時期を見誤ったことに在る。

FRBはようやく9月に0.5%の大幅利下げに踏み切り、その後11月に0.25%の追加利下げを行って合計0.75%の利下げを行った。

日銀は3月にマイナス金利から脱却して政策金利を+0.1%とし、その後は7月の0.15%の利上げに踏み切ったが、FRBそして日銀の両者共に市場が年初に期待した政策変更ペースよりも遅かったことにより日米金利差縮小が遅れてドル円相場は下がり難かったと言えようか?

その理由はアメリカ経済の堅調さが続く中、物価下落のペースがFRBが求めるよりも鈍かったことと、我が国においては利上げにより回復基調の我が国経済に水を差すと日銀が恐れたことに在ろうか?

11月の最終週に入ってからドル円相場の動きに変化が見られた。

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11月15日に戻り高値の156.74を付けた後、市場は12月17日~18日に開催されるFOMCに於いてFRBが追加利下げに踏み切り、逆に12月18日~19日に開催される政策決定会合に於いて日銀が追加利上げに踏み切る可能性が増したと考え始めて円の買い戻しに入り、ドル円相場は月末の30日には150円を下切る149.47の安値を付けた。

たった2週間で156.74から149.47へと7円27銭の大幅な下げを記録した。

実はこれ程の下げを演出したのは日米金利差縮小の思惑だけではない。

11月28日はサンクスギビングデイで、アメリカ人にとっては重要な祭日で皆家で七面鳥を焼いて食べる習慣が有り、多くの市場参加者はこれを境にクリスマスまで長期休暇に入り、何もしない。

当然既存のポジションはスクェアー(無しにする)にして、その後は新たなポジションを取ることは余り無い。

先週の急激な主要通貨に対する円高進行は、多くが今まで保持していた円の売り持ち(ドルやその他主要通貨の買い持ち)ポジションを切ったことによると思っている。

市場参加者の減少は市場の流動性の減少となり、当然市場のボラティリティー(変動率)は増す。

言い換えればちょっとしたニュースで相場は大きく振れるリスクが有り、この様な時に大きなポジションを持つのは厳禁である。

利益を得るチャンスも有るが、同時に損を被るリスクも大きくなる。

まあ年末に向かっては大人しくして、2024年の総括をし、2025年に向けて英気を養うのも良かろう。

個人的には、日米両金融当局の会合前は思惑が交錯してドル安&円高が進むが、会合後はBuy on fact(事実で買う)で買い戻しが入って、年を超えるのではないのかと思っているのだが、如何であろうか?

未だ少し早いですが、本年も大変お世話になりました。

明年もどうぞ宜しくお願い致します。

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


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