酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

酒匂隆雄の為替ランドスケープ 2022年11月号

2024/11/05

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米ドル円相場が10月に約11円の大幅な上昇を見せる中、来週の米大統領選挙を控え、市場の注目が集まっている。良好な米国経済指標や長期金利の上昇に加え、トランプ前大統領の支持率上昇がドル高・円安の主要因となっている。一方で、日本では政治の不安定さや日銀の金融政策を巡る不透明感が円安圧力となっており、為替市場は一段の変動リスクを孕んでいる。

いよいよ、来週は米大統領選挙

10月のドル円相場は、月初の10月1日に付けた142.96を安値とし、月末に近い10月29日に付けた153.86を高値とする値幅10円90銭と言う大相場を演じたが、値動きは正に月初から月末まで一直線でドル高&円安が進んだと言っても良かろうか?

(9月30日から11月1日までのドル円日足ローソク足チャート。)

こんなにほぼ一直線でドル高&円安が進んだ理由を考えてみると、(後から振り返ってみると、何と簡単な事か?
一々、そうだよなと自分でも感心する。)

-次から次へと出て来る米国経済指標の数字が良好でFRBによる利下げ幅縮小の思惑が広がりつつある。=ドル高要因。
-長期金利もそれに伴って上昇し、9月30日時点で3.786%であった米10年債利回りは11月1日時点で4.385%と0.599%も上昇した。=ドル高要因。
-一時米大統領選挙に於いて優勢が伝えられたハリス現職副大統領が徐々に支持を落とし、直近の世論調査ではついにトランプ前大統領に後塵を拝し、また賭けサイトの当選確率は60%以上がトランプ氏が勝つと見る。

トランプ氏は、財政支出拡大、不法移民流入の制限、関税拡大などの政策遂行を公言しており、トランプ氏が勝利の暁には、落ち着きつつある米国のインフレ状況に冷や水を浴びせる可能性が大である。

何時の間にか、“もしハリ。”→“ほぼハリ。”、そして今は“ほぼトラ。”となり、トランプ氏が次期大統領に返り咲く可能性が高いことになっているのだ。

これもFRBの利下げペースが益々スローダウンする可能性を示している。=ドル高要因。

-7月に始まった161.94からのドル安&円高の動きを見て、それまで長く円の売り持ち(ドルの買い持ち)保持していた順張り(相場が上がれば買い、下がれば売ると言うトレンド・フォロー型の取引手法。)が得意なシカゴ・IMMは8月に入ってドテンして円の買い持ち(ドルの売り持ち)に転じていたが、先週末153円を超えた時点で再度ドテンして今度は円の売り持ち(ドルの買い持ち)に転じた。彼らは明らかに此処からのドル上昇を狙っていると思われる。=ドル高要因。

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-先々週、堂々と総選挙に打って出た石破政権は惨敗して、自公両党による連立与党の過半数割れが生じた。

野党連合は総数では過半数を超えたものの、単独では過半数を制することが出来ずにこれからは今以上に政策に対する与野党の駆け引きが始まると思われる。

与党にとっては好むと好まざるに拘わらず、野党好みの財政支出の増加を選択せざるを得ず、益々我が国の財政赤字を増やすことになる。

そもそも海外投資家はこの様な政治の不安定さを嫌う。=円安要因。

-先週終了した日銀政策決定会合に於いて植田総裁は12月の利上げは否定しなかったものの、世界中の主要中央銀行が利下げに走る中、日銀による利上げ期待感にかつての勢いは無く、日米金利差縮小のタイミングは益々遅れるばかりである。=円安要因。

と、此処迄書くと、ドル高&円安要因ばかりであるが、残念ながらドル安&円高要因を探し出すのは結構難しい。

敢えて考えると、

-チャート的にはドルの買われ過ぎを示唆するインディケーター(ボリンジャーバンドとRSI.)も有り、要注意。
-日銀の介入に対する警戒感。

新任の三村財務官が、足元の為替の動きについて“一方向の急速な動きがみられると認識している。”と語り、“為替は基本的にファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映した動きが望ましい。”としたうえで“足元の動向を、投機的な動きも含めて、緊張感をさらに高めて注視している。”と述べて、口先介入を行ったが現時点では実弾介入が出る可能性は低いと心得る。

その理由の一つは、財務省が“投機の雄。”と理解するシカゴ・IMM.は、大規模なドル売り介入が実施された頃はドル買いポジションを保持していたが、現在は僅かな円の売り持ち(ドル換算で20億ドルの買い持ち。)となっており、かつての7月月初の様な140億ドルの買い持ちと言う様な大規模なポジションにはなっておらず、“投機的な動きは潰す!”と言う財務省の大義名分は無い。

などが考えられるが、上のドル高&円安要因と比べると余り強いインパクトは感じられない。

ご承知の様に米10年債利回りとドル円相場は強い相関関係を持っているが、これを見ると158円~160円くらいまでドル円が上昇しても、余り不思議とも思えない。

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今週の米大統領選挙は今年秋の最大イベントであるが、トランプ大統領の勝利となるとドルが上昇する可能性は高いと思われるが、元々トランプ氏はドル安、特に円高論者で有名であり、ドル高&円安の流れが続くかどうかは不透明である。

もし筆者が我が国の為替介入担当者であれば、トランプ氏がドル安&円高発言を告げた瞬間に大規模介入を行って“ドルをぶち下げる。”と面白いと思うのだが、まあ世の中、そんなに簡単な物でないことは重々承知している積りである。

市場のボラタイルな動き(予想し難い、過激な動き。)に翻弄されない様にリスク管理をきちんとやって参りましょう。

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


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