鈴木雅光の「奔放自在」

下げてもとにかく保有する

2024/10/16

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2024年8月の株価暴落を受け、新NISA口座でオルカン(全世界株式インデックスファンド)を購入した個人投資家の損失が話題となりました。しかし、実際には多くの投資信託保有者は冷静に対応し、大規模な資金流出は起きませんでした。本記事では、投資信託と信用取引の違いを明確にし、長期的な視点での投資信託の利点を説明します。株価下落時こそ、投資信託の積立投資を継続することの重要性を強調しています。

今となっては過去の話ですが、8月5日に株価が急落しました。日経平均株価で見ると、7月11日に4万2426円の高値を付けたところから下落に転じ、8月5日の最安値は3万1156円でしたから、実に1万1270円も下げたことになります。まさに暴落と言うに相応しい下げ方です。

この時、新聞、雑誌、ネットなどのニュースで賑わいを見せたのが、「新NISAでオルカンを買っていた個人が大損」といった類の記事でした。なかには、「(NISAのように)国が勧めるものには裏がある」とか、「(NISAには)指1本触れてはならない」などと公言して憚らないタレントや経済評論家もいて、それらがネットニュースで連日のように流されていましたが、最も冷静だったのは、当のオルカンを持っていた投資家でした。

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オルカンとは、オール・カントリーの略称で、全世界の先進国、新興国に分散投資した場合の投資効果を示す「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」に連動する投資成果を目指してポートフォリオを構築するインデックスファンドの愛称です。同様のインデックスに連動するファンドは、複数の運用会社によって設定・運用されているのですが、なかでも三菱UFJアセットマネジメントは圧倒的に大きな純資産総額を持っており、「オルカン」も実は同社によって商標登録されています。

では、日本の株価が暴落した時、オール・カントリーを保有していた投資家は、どう動いたのでしょうか。

実は、ほとんど資金流出は起こりませんでした。あくまでも口数ベースでの推移になりますが、暴落直後の8月7、8日に生じた解約で流出した口数は、54億9286万口です。この時点で、同ファンドの総口数は1兆5575億6523万口ですから、2日間でわずかに0.35%の口数減でしかありませんでした。

そして今はどうなっているのかというと、暴落直後の2日間で生じた資金流出以降は、ずっと資金流入状態が続いています。9月19日時点の総口数は、1兆6499億6843万口まで増えました。

他のファンドでも、たとえばコモンズ投信の「コモンズ30ファンド」や、SBIレオスひふみの公開販売ファンドである「ひふみプラス」も、資金流出はそれほど生じておらず、8月中を通じて順調に資金を集めていることが確認できます。あくまでも一部の投資信託でしかありませんが、意外にも投資信託を持っていた個人は、冷静に対応したのではないでしょうか。

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一方、深いダメージを被った個人もいます。たとえば「青汁王子は20億円の損失で再起困難」といった、センセーショナルなニュースも流れてきましたが、そういう人たちは投資信託で損失を被ったのではなく、株式の、それも信用取引によって大損した人たちです。

なかでも深刻なダメージを被ったのは、保有している現物株式を代用有価証券として担保に差し入れ、それを元手に信用建玉を行っていた投資家です。

株式を代用有価証券とする信用取引は、株価が上がるほど代用有価証券の評価額が上がり、それに連れて信用建玉も大きく増やすことができます。それは株価上昇局面において、利益を最大化させる魔法の杖なのですが、今回のように株価が急落すると、大変なことになります。株価急落によって、担保として差し入れている株式の評価額が下がると、信用建玉を減らさなければなりません。なぜなら担保不足に陥ってしまうからです。

もちろん担保が下がった分、現金を入れれば担保価値は回復し、信用建玉を減らさなくても済むわけですが、そこまで現金を潤沢に保有している投資家は少なく、結果的に多くの信用取引を行っていた投資家は、信用建玉を減らすために、損することを覚悟のうえで売りに回らざるを得なかったのです。

このように、信用取引でフルレバレッジをかけていた投資家は、実際、酷い目に遭いました。でも、それと投資信託を購入している個人は、全くの別物です。もちろん、投資信託を購入している個人も、8月の株安と円高で損失を被ってはいますが、だからといって信用取引を行っている投資家のように、「売らなければ破産する」という状況に追い込まれた人はほぼ皆無でしょう。

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だとしたら、そのまま持ち続ければ良いのです。「新NISAで買った投資信託が損をしている。解約した方が良いだろうか」といった相談もあるようですが、決して解約する必要はありません。過去の株価を見ても、確かに大きく下げた後、数年間、暴落前の水準を取り戻すのに時間はかかっても、やがて回復しています。日本株の「失われた30年」は例外だとしても、米国株や世界株に投資している投資信託に関していえば、むしろ下落したところは口数を多く買える分だけ、次の相場回復局面では基準価額を大きく押し上げる原動力になります。

投資信託は、信用取引のように大きな利益を得ることはありませんが、今回のような下げ局面でも安心して保有できるメリットがあります。そのメリットを活かすなら、とにかく毎月の積立で長期保有することを心がけるのが得策でしょう。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。


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