鈴木雅光の「奔放自在」

金利上昇で懸念される変動金利型住宅ローン 

2024/10/02

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日本は長年にわたって「ゼロ金利」でした。1990年代に入ってから景気が悪化し、物価が持続的に下落するデフレ経済が続いたからです。
それがここに来て、ようやく金利が生まれてきました。これまで超金融緩和を継続してきた日銀が、正常化に向けて動き始めたからです。

超金融緩和から正常化にシフトした理由は、物価上昇です。 

日本は1999年あたりから深刻なデフレに突入していました。消費者物価指数を、食料及びエネルギーを除く総合で見ると、1999年10月から2007年10月まで、前年同月比でマイナスが続きました。何と8年も物価が下落し続けたのです。その後、一時的に物価は弱いながらもプラスに転じましたが、2009年5月から2013年7月まで、再び前年同月比でマイナスが続きました。 

物価が下がり続けると、企業の利益がどんどん失われ、景気も悪化していきます。景気の底割れを防ぐためには、金融を緩和してお金を市場に供給する必要があります。日銀が超金融緩和政策を続けたのは、なかなか脱することのできないデフレ経済があったからです。 

しかし、その状況がここ数年で大きく変わりました。 

新型コロナウイルスによる行動制限が解け、経済活動が正常化に向けて動くなか、供給制約の問題が生じて物価が世界的に上昇し始めました。 

それに加え、ロシアのウクライナ侵攻によって資源・エネルギー価格が上昇。構造的な問題としては、これまで世界の工場として安い製品を世界中に輸出していた中国を、グローバルサプライチェーンから外す動きが出始め、物価上昇圧力を一段と強めてきました。 

こうしたことを背景にして、日本の物価も上昇し始めました。2022年4月から消費者物価指数がプラスに転じ、2023年7月には前年同月比で4.3%のプラスを記録したのです。 

日銀は2%という物価目標を置いて金融緩和政策を続けてきました。それがほぼ恒常的に2%を超える水準に達していることから、超金融緩和政策を継続する名目が無くなったのです。 

日銀は現状、中立金利を1%と見ています。それに向けて政策金利を引き上げる方向性を示しているため、今後も金利が上昇する可能性は十分にあるでしょう。当面は、0.25%とした政策金利の誘導目標を、1%に向けて複数回、引き上げてくるはずです。 

そうなった時、私たちの生活にはどのような影響が生じてくるでしょうか。 

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まず預貯金金利が上がります。これは、今までほとんど金利が付かない預貯金に我慢してお金を預けていた立場からすれば、歓迎すべきことでしょう。少なくとも預貯金であれば、元本割れリスクがない状態で利息を得ることができます。その利息が、金利上昇にともなって増えていくわけですから、特に文句を言うところはないはずです。 

ただ、お金を借りることになると、いささか金利上昇は厄介です。なぜなら借りる側が返済しなければならない利子が増えていくからです。特に変動金利型の住宅ローンを組んでいる人たちにとっては、戦々恐々だと思います。 

たとえば変動金利型住宅ローンを、年0.330%の融資利率で3000万円借り入れ、20年で返済する場合、月々の返済額は12万9187円ですが、日銀が政策金利を複数回にわたって引き上げ、住宅ローン金利が1%程度上昇すると、毎月の返済額は14万3927円になります。 

とはいえ、金利は上がることもあれば、下がることもあります。今は明らかに金利上昇局面であり、変動金利型住宅ローンの返済負担も重くなる恐れはありますが、金利はある程度の水準まで上昇すれば、再び低下へと向かいます。金融引き締めを続ければ、景気がスローダウンして、金利を下げざるを得なくなるからです。 

今は変動金利型住宅ローンの返済負担が重くなる点が懸念されていますが、長期間、住宅ローンを返済する間には、金利が下がって返済負担が軽くなることもあるので、基本的に金利の上下は、変動金利型住宅ローンを組んでいる人にとって、中立的といっても良いのかも知れません。 

ただ、ひとつだけ問題があるとしたら、月々のローン返済に余裕がない場合です。 

金銭的にゆとりがあって、多少、返済額が増えても問題ないという人なら、返済負担が多少重くなったとしても、それを乗り切って、次の金利低下局面で返済負担が軽くなるというメリットを享受できますが、なかには「賃貸で家賃を払うくらいなら、同じようにお金を払う苦しさはあっても、いずれ自分のものになるのだから、住宅ローンを組んで家を買おう」という人もいるはずです。 

ただでさえ、カツカツな家計で変動金利型の住宅ローンを組んでいるとしたら、今回の金利上昇で、相当厳しい状況に追い込まれる恐れがあります。金利が上昇し始めている今のうちに、変動金利型住宅ローンを組んでいる人は、家計収支の見直しを始める必要がありそうです。 

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。


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