石破首相誕生で先物が急落しているが
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9月27日、自民党総裁選で石破新総裁が誕生しました。恐らく、このまま石破内閣の樹立に向けて動いていくのだと思いますが、石破新総裁が決まった直後から、マーケットは大混乱に陥っています。
同日午後4時20分時点で米ドル/円は3円超急落し、日経平均株価先物も終値に対して1400円超下落しています。
理由は、石破新総裁の経済政策が反市場的とみなされているからです。石破新総裁は金融所得課税の強化に言及していますし、日銀の金融政策に対しては、緩和を修正する現日銀執行部の考え方を容認するスタンスを取っています。つまり、追加利上げを容認するスタンスですから、そのいずれもがマーケットにとってはネガティブな材料に映るのだと思います。
ちなみに金融所得課税の強化について言及したのは、石破新総裁が初めてではありません。岸田前首相が総裁就任後、初の記者会見で金融所得課税の見直しを提示した2021年10月4日、日経平均株価の終値は2万8444円でしたが、金融所得課税見直しの報を受け、翌日の日経平均株価は最も安いところで2万7460円まで下落しました。そして、その後も株価は冴えない動きを続け、2022年3月19日には2万4681円まで下落し、2023年4月までボックス圏での推移が続きました。
それと同じ轍を踏むのかどうか、気になる石破新総裁ですが、今回は金融所得課税の強化に加え、金融政策の転換がマーケットにとっては重石になっていると見られているようです。7月31日の金融政策決定会合で、政策金利の誘導目標を0.25%に引き上げた後、日銀は2026年度までに1%を中立金利として、政策金利を引き上げたい意向を示しています。金融所得課税の強化に加えて金融引き締めですから、先物とはいえ株価が敏感に反応するのは、やむを得ないところでしょう。
ただ、マーケットはこの手の材料に対して過剰に反応するきらいがあります。
金融引き締めを容認する石破新総裁のスタンスについて、恐らく為替レートは大きく反応せざるを得ないでしょう。
米国が利下げに転じる一方、日本がこの先、もう一段の利上げを実施するとなれば、日米金利差は縮小します。これまで両国の金利差拡大を材料にして米ドル買い・円売りが進んできたことからすれば、石破新総裁の誕生で3円の米ドル安・円高が進んだのは理解できます。
ただ、先物取引とはいえ株価が1400円幅で急落するのは、いささか過剰反応といっても良いかも知れません。
仮に金融所得課税が強化されるとしても、それが直接、企業業績に大きな影響を及ぼすことにはならないでしょう。
確かに、一部の個人投資家の間では、「金融所得課税の強化によって、預貯金だけでなく株式のキャピタルゲイン課税や配当課税の強化も行われるのであれば、日本株を売って米国株に切り替える」といった意見もあります。こうした点から日本株が売られる可能性は、ないこともないわけですが、それはあくまでも投資家心理に対して及ぼす影響に過ぎません。
もちろん、これが法人税率の引き上げということになれば、企業業績にとっては相当のネガティブ・インパクトになるでしょう。でも、そこまでの話はまだ一切出ていませんし、前述したように金融所得課税の強化は、企業の業績に直接、影響を及ぼすものではないと考えます。
だとしたら、石破新総裁誕生のニュースを受けてからの先物の急落は、過剰反応といわざるを得ません。
この原稿を書いているのは、9月27日の夕方なので、すでに現物市場の取引は終了していますし、そのまま週末を挟みますから、どうなるのかは皆目見当がつかないのですが、もし週明けの月曜日に東京証券取引所の株価が急落することになれば、それは絶好の買いチャンスでしょう。
また、積立で投資している人であれば、この手のニュースに惑わされる必要は一切ありません。もし株価が下げ続けるような時は、逆に定額購入によって購入できる口数が増えるチャンスと考えて、退場することなく淡々と積立投資を続けるのが、長期的な資産形成にはプラスです。
鈴木雅光(すずき・まさみつ)
金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。
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