鈴木雅光の「奔放自在」

NISAの制度見直しで個人マネーはどこに向かったのか 

2024/08/02

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旧聞に属する話で恐縮だが、今年1月からNISAのしくみが大幅に見直されました。
制度そのものが恒久化され、非課税期間は無期限、さらに非課税限度額も旧一般NISAに該当する成長投資枠と、つみたてNISAに該当するつみたて投資枠の両方を合わせて1800万円(ただし成長投資枠のみだと1200万円)までに拡張されたのです。

ここまでの優遇措置は、今までありませんでした。それだけに、金融庁が「貯蓄から投資へ」の流れを創り出すのに、いよいよ本気になったと考えられます。 

では、実際に個人マネーはどこに流れているのでしょうか。 

まず大きなお金の流れを見てみましょう。2024年3月末の資金循環統計が公表されましたが、そのなかに「家計の金融資産」という項目があります。これは、家計がどの金融資産にいくら置いてあるのかを見るためのものです。 

それによると総額は2199兆円で、過去最高額を更新しました。 

次に金融商品別の残高と全体に占める比率は、以下のとおりです。カッコの中の数字が構成比です。 

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家計の金融資産

金融商品残高(構成比)
現金・預金1118兆円(50.9%)
債務証券29兆円(1.3%)
投資信託119兆円(5.4%)
株式等313兆円(14.2%)
保険・年金・定型保証541兆円(24.6%)
うち保険382兆円(17.3%)
その他79兆円(3.6%)

現時点においても圧倒的に現金・預金の占める割合が高いため、「個人の預金好きは変わらない」といった感想を良く目にしますが、実は昨年12月から今年3月までの3カ月間の増減率を見ると、実は現金・預金の残高は減少しています。減少率は、現金が▲3.01%、流動性預金が▲0.13%、定期性預金が▲1.41%です。 

対してリスク性商品の増減率を見ると、株式等が13.54%増、投資信託が12.44%増でした。ただし、これらの数字は時価評価ベースですから、株式や投資信託の場合、値上がり益による増加分が含まれていることに留意しておく必要はあります。 

以上が個人マネーの動きを大まかに捉えたものですが、個人の資産運用ツールとして代表的な投資信託では、どのような動きが見られたのでしょうか。 

これはもう圧倒的に「オール・カントリー」の一人勝ちだったことが分かります。

オール・カントリーとは全世界株式に分散投資するインデックス型の投資信託です。その代表ともいうべき「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の2023年12月末時点における純資産総額は、1兆8205億6600万円でした。それが2024年7月12日時点では4兆362億3700万円まで増えています。 

ただし純資産総額は組入資産の時価評価額ですから、値上がり益も含めた数字です。したがって、純粋に資金の出入りを計算するには、受益権口数ベースの増減を把握するしかありません。その数字を、2023年12月末を100として指数化したものが、添付したグラフになります。 

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※クリックで画像を拡大表示します

これによると、オール・カントリーの受益権口数は、7月12日時点で173.03ですから、昨年末比で73.03%も増えたことになります。オール・カントリー1本を持っておけば、それで世界中の株式市場に分散投資できる便利さに加え、ローコストである点が興味を惹いたと思われます。 

ただ、一方でこれまで証券会社などの販売金融機会を介在させず、地道に個人資金を集めていた直販系投資信託会社が、今年に入ってから苦戦しています。NISAの制度見直しにより、資産形成に対する個人の関心が高まれば、直販系投資信託への関心も高まりそうなものですが、現状において、そうなっていません。コモンズ投信の「コモンズ30ファンド」、セゾン投信の「セゾン・グローバル・バランスファンド」は、それでも受益権口数が増加していますが、鎌倉投信の「結い2101」、さわかみ投信の「さわかみファンド」、そして直販のみで販売されているレオス・キャピタル・ワークスの「ひふみ投信」の受益権口数は、減少しています。 

なぜ、直販がダメだったのかというと、NISA口座の開設が1人、1金融機関に限定されているからです。制度見直しによって、1800万円までの非課税枠が認められたため、単一の商品ではなく、複数の商品に分散しようと考える人が増えたのでしょう。そうなると、購入できる商品の数が限られる直販投資信託会社にNISAの口座を開くのを敬遠する動きが出るのも仕方がないのかも知れません。 

ちなみにコモンズ投信やセゾン投信の場合、直販はもちろん行っていますが、それ以外にも金融機関経由で販売しているため、NISAの制度見直しが行われても、あまり影響を受けなかったものと考えられます。 

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。


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