今から投資をはじめるのは正しいのか?
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株価の動向や将来の展望に注目が集まる中、今から投資を始めるべきかについて考えてみましょう。過去の株価の変動を振り返りつつ、投資のリスクやチャンスについて検証します。
このところ日本株が堅調に推移しています。日経平均株価は4月中旬まで、2万8000円の節目をなかなか抜けずにここまで来ていたのですが、5月1日に2万9000円台をつけてからは急速に上げ足を速め、6月15日には3万3767円の高値をつけました。
振り返ると、日経平均株価が3万8915円の過去最高値をつけたのが、1989年12月のことです。あれから33年と6カ月が経ちました。当時を知っている人たちにとっては、少しだけ感慨深いものがあるのではないでしょうか。
もう少し、日経平均株価の動きを振り返ってみると、過去最安値を付けたのが2008年10月のことでした。この時の株価は6994円です。1989年12月の最高値から見ると、18年10カ月をかけて、日経平均株価は実に82%も下落したのです。
よく相場の世界では、「半値八掛け二割引き」といって、天井からの安値のめどを考える時に用いられる格言がありますが、この伝で言うと、高値を100%とすれば、底値はその32%になるので、1万2458円で下落は止まるはずでしたが、実際のマーケットでは、さらにそこから43.8%も、株価は下がり続けました。
2008年に起ったリーマンショックで、世界中の金融市場が大混乱したため、それにダメを押されて、日本の株価はさらに大きく下落したのです。
以後、しばらく民主党政権のもとで経済政策がうまくいかず、株価は4年近くにわたって沈黙状態が続きました。
そしてアベノミクス。2013年以降、量的・質的金融緩和政策が実施されたのを機に、再び株価は動意づきました。アベノミクス前夜、日経平均株価は9000円台後半で推移していましたが、アベノミクスを機に株価は上昇トレンドへと移っていきました。途中、コロナショックなど大きく値を崩す場面もありましたが、それでも何とか下降トレンドにはならず、この5月以降、急速な水準訂正を実現しています。
このように株価が上昇トレンドを続けると、これまで投資に興味がない人までもが、投資を始めようとします。
とはいえ、ここまで株価が上昇してくると、「ここで買ったら値下がりしてしまうのではないか」、「今の水準は買われ過ぎなのではないか」といった考えも頭のなかに浮かんできて、結局のところ全く身動きが取れないままという人も少なくないのかも知れません。
では、実際のところ、どう考えれば良いのでしょうか。
- いつか来る暴落を待って買う。
- ひとまず投資して小幅でも良いから値上がり益を取りにいく。
- 何もしない。
恐らく、上記の3パターンが多いのではないかと思います。
ただ、ひとつずつ問題点を考えると、まず①の「いつか来る暴落を待って買う」という人は、恐らく暴落が起こったとしても買えない人だと思います。
なぜなら、相場が暴落に転じると、今度は「まだ下がるんじゃないか」とい気持ちが先に立ってしまうからです。
そして、相場が底を打って上昇に転じても、「あれだけの暴落の後だから、また下がるかも知れない」などと考えて買えず、さらに上昇すると、今度は「もう高過ぎて買えない」ということになりがちなのです。
では、②のように、何でも良いからとにかく投資をスタートさせ、少しでも値上がりしたら暴落前に利益を確定させるのはどうでしょうか。
確かに一見、正しい方法であるかのように思えますが、このような考え方で投資をスタートさせると、僅かな値上がり益で売却してしまう恐れがあります。
そもそも「小幅でも良いから値上がり益をとる」と考えているのですから、大きなリターンなど望むべくもありません。今の株価が1000円で、将来的にこれが3000円、5000円になるポテンシャルを持っていたとしても、恐らく1200円くらいになったところで売ってしまうのです。
では、③のように何もしない方が正解なのでしょうか。
これこそ悪手といっても良いでしょう。今から30年ほど前は、預貯金金利が高く、物価もデフレ局面に入りかけていたので、投資などはせず、預貯金で運用してもそこそこの利息収入が得られたのと同時に、お金の価値も上がっていったのですが、これからはそうもいきません。仮にインフレと円安がこれからの常態になるとしたら、インフレや円安に勝てる金融商品を持つ必要があります。
結論を言うと、投資はした方が良いでしょう。ただし、いきなりまとまった資金を投入して短期の値上がり益を狙うといった投資の仕方は感心できません。
株式に投資するのは、短期の値上がり益を取るためのものではありません。これからの世の中が、それまでのデフレ・円高から、インフレ・円安に転換する可能性があるなかで、自分の資産価値を目減りさせないために行うものと考えて下さい。
だとしたら、おのずと投資の仕方も見えてきます。
人口が減少傾向をたどる日本経済のファンダメンタルズは、これから先、不安定になっていくでしょう。したがって、内需関連の企業は投資対象から外します。投資するならグローバルに稼げる企業でしょう。
そういう銘柄をピックアップしたら、後は淡々と買い続けていくだけです。対象銘柄は若干絞られてしまいますが、複数の個別銘柄で積立投資をするならば、「株式累積投資制度」を利用するという手もありますし、あるいはグローバル企業のポートフォリオを構築して運用している投資信託を毎月、定額購入していくという手もあります。
いずれにしても、デフレ・円高からインフレ・円安へと大きくパラダイムが転換したと考えるのであれば、目先の値上がり益を狙うといったギャンブル投資ではなく、自分の保有資産の中身を、時代の変化に合わせたものに変えていくというイメージで、現預金の比率を下げる一方、株式の比率を上げていくことが必要になってくるのだと思います。
鈴木雅光(すずき・まさみつ)
金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。
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