流行のペアローンの問題点
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先般、三井住友信託銀行が「令和の住まいと住宅ローン事情」というレポートを出しました。
調査対象は全国の20~69歳の男女で、WEBアンケート形式で行ったものです。サンプル数が1万1197件。
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年代別の属性は、
20-29歳・・・・・・1910件
30-39歳・・・・・・1982件
40-49歳・・・・・・2593件
50-59歳・・・・・・2482件
60-69歳・・・・・・2230件
となっています。それによると、持ち家率は年齢とともに上昇傾向にあり、持ち家者の8割が自費購入。残り2割は相続・上となどで保有しており、持ち家購入時にローンを利用した人は約8割、という結果が出ています。
住宅ローンを利用している人のうち、頭金ゼロと答えた人の比率は、全体だと24.3%、1割が19.7%となっています。ちなみに頭金ゼロと答えた人の比率を年代別で見ると、
20-29歳・・・・・・26.8%
30-39歳・・・・・・38.6%
40-49歳・・・・・・29.6%
50-59歳・・・・・・23.8%
60-69歳・・・・・・16.4%
となりました。では、借入金額はいくらになるのでしょうか。これは単独ローンとペアローンの両方について、年代別にみてみます。
まず単独ローンは以下のとおりです。
20-29歳・・・・・・2420万円
30-39歳・・・・・・2798万円
40-49歳・・・・・・2469万円
50-59歳・・・・・・2313万円
60-69歳・・・・・・2061万円
次にペアローンは以下のようになりました。
20-29歳・・・・・・3747万円
30-39歳・・・・・・3396万円
40-49歳・・・・・・2791万円
50-59歳・・・・・・2728万円
60-69歳・・・・・・2237万円
ペアローンに関して言うと、20-29歳、30-39歳の年齢層で、単独ローンに比べて高めの融資を受けていることが分かります。
では、ペアローンとは何でしょうか。ここ数年、実は住宅ローンにおいてペアローンが人気を集めています。
基本的に家を買うのは結婚後のケースが多いと思われますが、単独ローンは夫婦のうちどちらかが債務者になり、住宅購入資金を借り入れるタイプの住宅ローンです。これに対してペアローンは、夫婦2人がそれぞれに住宅ローンを組み、お互いが相手の連帯保証人になるというローンのことです。
その結果、ペアローンは単独ローンに比べて融資限度額を増やすことができます。夫婦共働きの家庭にとっては、より高額の家を購入できることもあり、注目されています。
ペアローンのメリットは、このように借入限度額を増やせる点で、それによってより高額物件を購入できることですが、問題点もあります。実際にペアローンを活用する時は、このデメリットをしっかり頭に入れ、そのデメリットが現実化しないことを確信できない限りは、組まない方が良いでしょう。
そのデメリットは何かというと、ペアローンの場合、お互いの連帯保証人になるので、いずれか片方が返済不能に陥った場合、もう一方が全額の返済義務を負うことです。
また一方が亡くなった場合は、お互いがそれぞれの団信(※団体信用生命保険)に加入しているので、一方の分の返済はカバーされますが、残された方の分の返済は引き続き残ってしまうのです。
※【団信(団体信用生命保険)】住宅ローンの契約者に万が一のことがあったときに、家族や家を守ることができる保険
何よりも、ペアローンで怖いのは、離婚や退職のリスクが高いことです。離婚でいずれか一方が家を出たとしても、返済義務が残ってしまいます。この状態でいずれか一方の支払いが滞ると、連帯保証人として、全額の返済負担が一方にのしかかってきます。これは退職によって返済不能に陥った場合も同じです。
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さて、離婚や退職というのは、将来の不透明リスクです。そして、将来の不透明リスクは、年齢が若い人ほど高くなります。人の寿命が80歳だとして、今70歳の人であれば残り10年ですから、その間にこの手の不透明リスクが顕在化する可能性は、それほど高くありません。
しかし、20代や30代の人は、まだまだこの先、50年、60年という長い年月が残されていますから、この手の不透明リスクに直面する確率は、かなり高いと考えるべきでしょう。「自分たちは絶対に離婚しない」、あるいは「夫婦揃って定年まで働き続けることができる」ということを、20代、30代で確信できる人は、恐らくほとんどいないと思われます。そうである以上、単独ローンに比べて融資限度額が高いからといってペアローンを選択するのは、自分の人生においてかなりリスクの高い決断であることを、十二分に理解する必要があります。
そもそもペアローンを組んで大きな家を建て、そこで家族揃って暮らせる時間など限られています。大概、子供は成人したら独立して、別に生活の拠点を持ちますから、その後は古くなった大きな家に老夫婦で暮らすことになります。つまり持て余すことになります。
これからは特に人口減少によって、持ち家がどんどん余っていくようになります。夫婦2人暮らしになってから、古びた家を売却しようとしても、恐らく売れないでしょう。そういう時代になっていくものと考えられます。つまり、20代でペアローンを組んでまで家を買うという行為は、ライフプランの観点から考えても非合理的ということになります。
鈴木雅光(すずき・まさみつ)
金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。
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