暗号資産の有価証券化で何がどう変わる?
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金融庁が暗号資産を有価証券に並ぶ金融商品として位置づける検討を開始。実現すれば税制が変わり、ETF組成も可能になるなど、暗号資産市場に大きな変化が起きる可能性がある。

2月10日の日経新聞朝刊に「金融庁が暗号資産を有価証券に並ぶ金融商品として位置付ける方向で検討に入った」という記事が掲載されました。
暗号資産が有価証券に位置づけられると、どうなるのでしょうか。
まず、一番大きいのが税制でしょう。
現在、暗号資産の利益は「雑所得」に分類されており、その額が20万円を超えれば確定申告が必要になります。
雑所得は、給与所得などと合算した額に応じて税金が決まる総合課税ですから、利益の額が大きくなると、累進課税によって、所得税率が非常に高くなることがあります。
2024年中、たとえばビットコインの価格は3倍程度まで値上がりしているので、利益を確定した方などはかなりの利益を手にした可能性があります。確定申告を忘れたり、故意に申告しなかったりした場合、無申告加算税が課せられるので、注意が必要です。
ちなみに、暗号資産を有価証券に並ぶ金融商品として位置づけられると、売買によって得られた利益に対して20.315%の分離課税が適用されることになります。つまり株式や株式投資信託などと同じ税率になるのと同時に、「源泉徴収ありの特定口座」的なものが認められれば、税務署で確定申告を行う手間も省けます。これが現実化すれば、暗号資産は投資商品のひとつとして、一気に市民権を獲得するのではないかと思われます。

ただ、税制に加えてもうひとつ注目されることがあります。それは、ビットコインなど暗号資産を組み入れたETFの組成・上場が可能になることです。
ETFとはExchange Traded Fundの略で、株式市場に上場される投資信託のことです。日本国内でも上場されていますが、現在のところ日経平均株価やS&P500といった株価インデックスに連動するタイプが中心です。ちなみにETFは株式市場が開いている時間帯は、常に売り買いができる、株式と同じ流動性を持っています。
このETFに暗号資産を組み入れることによって、ファンドの資産価値が常にETFに連動する仕組みをつくることができます。暗号資産が有価証券という位置づけになれば、ETFへの組み入れが可能になり、暗号資産の値動きに連動するETFが誕生することになります。
すでに米国では、SEC(証券監視委員会)がビットコインを組み入れたビットコイン現物ETFを承認しています。これにより昨年、11のビットコイン現物ETFが誕生しました。その発行体も、フィデリティやフランクリンテンプルトン、インベスコ、ブラックロックなど、投資信託の運用でも知られている有名な投資会社ばかりです。
そして、これらビットコイン現物ETFが今、米国で急速に成長しています。たとえばブラックロック社が設定した「iシェアーズビットコイン・トラスト」は、上場からわずか11カ月で、資産規模が500億ドルにまで膨らんだということです。
このように暗号資産を組み入れたETFが誕生したことにより、暗号資産マーケットの地位が大きく上がりました。それまでは米国においてさえも、今ひとつよく理解できないという理由で懐疑的に見られていた暗号資産ですが、前述したように、投資信託の運用で有名な投資会社がこぞってビットコイン現物ETFの上場を行ったことによって、一気に市民権を得た感があります。
それと同時に、ビットコイン現物ETFは、個人が暗号資産に投資する際のハードルを、大幅に引き下げました。

これまで暗号資産に投資する際は、暗号資産取引所に口座を開設し、設定が難しいとされるウォレット、暗証番号を管理するという手間がかかりました。自分でこれらを設定するのが難しいということで、暗号資産が大きく値上がりしていたのを、指をくわえて見ているだけという人も少なくなかったはずです。
でも、暗号資産を組み入れたETFが誕生すれば、そのような手間は一気に解消されます。何しろETFなのですから、株式や他のETFを売買するのと同じ感覚で取引できますし、証券会社に口座を持っていれば、誰もが取引できるようになるはずです。
もちろん、暗号資産を通貨として、各種決済に用いることは出来ないでしょうが、現時点において暗号資産を決済に用いるために保有している人は、恐らく皆無に等しいでしょう。単純にキャピタルゲインを狙う目的であれば、暗号資産ETFで十分に事足りるというわけです。
ただ、暗号資産ETFが資産形成に適しているかどうかは、少し冷静に考えた方が良いでしょう。ビットコインの値動きを見ても分かりますが、総じて暗号資産はボラティリティの高い投資対象です。また、株式や債券のようにフェアバリューを推計する手段もないため、割安、割高の基準もはっきりしません。つまり、かなり投機的な取引が行われる可能性が高いのです。
投機的な対象を資産形成の手段にする場合、あくまでも保有資産の一部を充てるのが大事です。資産形成のポートフォリオの核は、あくまでも株式や債券などの伝統的資産とし、それに少し色どりを加える程度の組み入れが、望ましいと考えられます。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)
金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。
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