金利上昇に強い資産、弱い資産
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前回のコラムで、2025年は金利上昇局面にあるとはいえ、それほど大きな利上げは行われないという話をしました。日本銀行は2016年から、政策金利である無担保コール翌日物の誘導目標をマイナス圏に維持していましたが、2024年1月に0.10%に、同年7月には0.25%へと引き上げてきました。
しかし、それ以降の金融政策決定会合では追加利上げを見送っていることから、まだ利上げに対しては慎重な姿勢であることが伺われます。植田日銀総裁は12月の金融政策決定会合が行われた後の会見で、「次の利上げの判断にいたるまではもうワンノッチ欲しいというところで、そこに賃金上昇の持続性があり、具体的には来年の春闘のモメンタムをみたい」と述べました。2025年春闘で、より大きな賃上げが実現すれば、それを見て利上げの判断を下すということです。
恐らく今後、利上げが行われたとしても、かなりのスローペースになりそうです。したがって当面は、金利上昇を大前提にした大幅なポートフォリオの組み換えはしなくても良いと思いますが、いずれ金利上昇が本格的になった時に備えて、金利上昇に強い金融商品、弱い金融商品は把握しておくべきだと思います。
まず預貯金など主に金利収入を得る金融商品の場合、金利上昇局面では変動金利型、ならびに満期までの期間が短い預金で運用するのがセオリーです。
ただ現状、変動金利型の金融商品は、あまり存在していません。かつては貸付信託(ビッグ)や変動金利定期預金などがありましたが、今は両商品とも取扱が終了しています。
そうなると、変動金利型金融商品で元本の安全性が最も高いのは、10年満期個人向け国債(変動10)になります。これは半年ごとに適用利率が見直される国債なので、償還を迎える10年後までの間に金利が変動すると、それに応じて適用利率が変動します。
具体的には、固定金利型の10年国債の表面利率に対して0.66を掛けたものが、10年満期個人向け国債の適用利率になります。たとえば固定金利型10年国債の表面利率が1%だとすると、その0.66ですから、10年満期個人向け国債の適用利率は0.66%になります。ちなみに2024年12月30日まで募集していた同国債の適用利率は0.71%です。
また固定金利型の金融商品でも、金利上昇局面に対応できる方法があります。それは満期までの期間が短い定期預金を用いることです。
たとえばスーパー定期の6カ月物に預け、満期ごとにそのまま自動継続させていくと、実質的に6カ月ごとに適用利率が見直される変動金利型金融商品と同様の運用効果が得られます。
ただ現状、定期預金での運用はあまり魅力的ではなさそうです。
たとえば三菱UFJ銀行の6カ月物スーパー定期の適用利率は、12月26日時点で0.125%です。前述した10年満期個人向け国債の適用利率が0.71%ですから、比べるまでもなく10年満期個人向け国債の方が有利です。
ちなみに変動金利のなかでも完全実績分配方式の金融商品もあります。証券会社に口座を開いた時に、自動的に作らされるMRFがそれです。
MRFは誤解を恐れずに言うならば、証券会社の預金口座になります。もちろん証券会社は銀行と違い、預金口座を扱うことはできません。そのため株式や投資信託を売却し、次に他のものを買うまでの間、かつては証券会社の預り金として処理していましたが、預かり金は預金と違って、一切、利子が付きませんでした。それを普通預金のように日々、付利させるようにしたのがMRFです。
MRFは投資家が株式や投資信託を買うための資金を一時的にプールしておくためのものですから、1円たりとも損をさせるわけにはいきません。そのため投資信託の一種ではありますが、MRFは極めて元本安全性の確保を重視した運用が行われています。
具体的には償還までの期間が極めて短い債券やCD、CPなどの短期金融資産で運用されています。MRFに組み入れられている商品そのものが元本割れリスクの小さいものなので、非常に安定した運用ができます。このように償還までの期間が非常に短い資産を中心にしてポートフォリオが組まれるため、MRFの分配率も金利上昇と共に上がっていきます。ちなみにMRFの分配利回りは運用会社によって異なりますが、12月22日時点で0.0806%~0.2635%になっています。
利率だけを比較すると、やはり10年満期個人向け国債の適用利率が有利ですが、利率が高い反面、不便さもあります。MRFはいつでも解約できますが、10年満期個人向け国債やスーパー定期は解約時にペナルティが課せられ、受け取れる利息が大幅に減額されます。この点、MRFはいつでもノーペナルティで解約できるメリットがあるので、特に10年満期個人向け国債を買う時は、少なくとも満期を迎える10年先まで運用できる資金を充てる必要があります。
もう1点、投資信託には債券を組み入れて運用するタイプがあります。商品分類上、株式型投資信託に含まれるのですが、これは金利動向次第で基準価額が下がり、1万円を割り込んでしまうリスクがあるからです。
債券をメインに組み入れている投資信託の場合、ともすれば公社債投資信託に分類したくなるのですが、公社債投信の場合、「基準価額が1万円を割り込んだ時は、1万円を回復するまで追加設定が認められない」というルールがあるため、1万円われの状態では追加設定ができません。この不便さを逃れるため、敢えて株式型投資信託に分類しているのですが、この点からも想像できるように、債券を主要投資対象にしていたとしても、元本を割り込むリスクがあるのです。
具体的に、どのような時に元本を割るのかというと、金利が上昇している時です。債券、特に償還までの期間が長い債券の場合、金利が上昇すると債券価格が下落し、それを日々、基準価額を算出する際に考慮しなければならないため、組入債券の債券価格下落と共に、それを組み入れている投資信託の基準価額も値下がりしてしまうのです。
金利上昇局面では、償還までの期間が長い債券ほど、債券価格が大きく値下がりします。この特性を頭に入れて、金利上昇局面でダメージを受けないような商品を選択するようにして下さい。
鈴木雅光(すずき・まさみつ)
金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。
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