鈴木雅光の「奔放自在」

なぜ投資信託の資金流出はダメなのか

2025/04/04

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投資信託のなかでも「追加型」と称されるタイプは、運用開始後も追加設定・解約が自由にできるタイプです。
投資家の側からすれば、いつでも自由に買付、解約ができるということで、とても利便性が高いのですが、ひとつだけ問題があります。
それは、解約による資金流出額が、追加設定による資金流入額を上回ると、資金流出超になり、ポートフォリオの取り崩しが生じることです。

たとえば1か月間で100億円の追加設定が行われるのと同時に、200億円の解約が生じた場合、差し引きで100億円の資金流出超になります。その結果、ポートフォリオに組み入れられている銘柄のうち、100億円分を市場で売却しなければならなくなります。

これがファンドのパフォーマンスに、どのような影響を及ぼすのかについて考えてみましょう。

結論から申し上げますと、資金流出超が続いているファンドは、運用成績が悪化する恐れがあります。

さまざまな理由が考えられますが、ここではその主だったものについて説明しておきましょう。

ファンドのなかでも、運用担当者が銘柄選択の目利きとなって運用しているアクティブファンドの場合、長期的に成長が期待できる銘柄を組み入れます。ポートフォリオがある程度、完成したところで徐々に解約が増えて資金流出超になったら、組入銘柄の成長を取り切れない状態で、ポートフォリオからその銘柄を外すことになります。当然、運用成績にとってはネガティブな要因です。

次に、運用環境の悪化によって組入銘柄の株価が下がっている局面で、資金の流出入がファンドの運用成績に、どのような影響を及ぼすのかを考えてみましょう。

株価が下落する局面でも、資金の純流入が続いているファンドであれば、株価が上昇に転じた時に、基準価額が早期に回復する可能性が高まります。なぜなら、流入した資金で、優良企業の株式を、その株価が安いところで仕込めるからです。

では、逆に株価が下落する局面で資金が流出するとどうなるでしょうか。資金が純流入した時とは逆に、優良銘柄の株価が安くなったところで、次の上昇局面に備えて仕込むことが出来なくなります。つまり、運用成績を改善させるチャンスが得られないまま、運用成績がじり貧になる恐れが非常に高いのです。そうなると、多くの受益者がそのファンドを解約したくて仕方が無くなります。

そのような状態で、株式市場が回復して株価が大きく上がったりしたら、今度はやれやれの解約も生じてくるでしょう。基準価額が回復しても、さらなる解約が生じれば、そのファンドの運用成績はボロボロになってしまいます。

実例があります。

先般、野村アセットマネジメントが設定・運用していた「ノムラ日本株戦略ファンド」の運用方針が変更され、「ノムラ・ジャパン・オープン」と同一のものになることが発表されました。

ノムラ日本株戦略ファンドは2000年2月2日に設定されたファンドで、25年間の長きにわたって運用されてきました。しかも同月25日には純資産総額が1兆円を超えて、「1兆円ファンド」として有名になったこともあります。

しかし、その後はITバブルの崩壊、リーマンショックなど市場環境の悪化が続き、運用成績も芳しくない状態になりました。2025年2月時点の基準価額は1万5000円台で、この25年間で支払われた分配金の総額は1360円です。配当込みの年率リターンは約2.36%でしかありません。

これだけ運用成績が悪いと、やはり解約が生じてきます。前述したように、運用開始直後は1兆円にも達した純資産総額も、2025年1月末時点では564億円にまで目減りしてしまいました。同ファンドの運用成績の悪化は、運用開始からマーケットの低迷が続いたのもさることながら、やはり資金流出が続いたことも原因の一つであると考えられます。

また資金が純流出になっていなかったとしても、一向に運用資金が増えないようなファンドについては、ひとまず購入を見送って、様子を見た方が良いでしょう。運用開始から1年が経過しても、ほとんど運用資産が増えないようなファンドは、マーケットに神風でも吹かない限り、リターンの改善は期待できません。どれだけ立派な運用哲学を騙っても、運用資金が増えなければ、ファンドのリターンを支える銘柄をポートフォリオに組み入れることが出来ないからです。

以上の理由から、資金流出が続いているファンド、あるいは運用が開始されてから一定の期間が経過しているにも関わらず、運用資産が一向に増えないようなファンドは、買わないことをお勧めします。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。


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