鈴木雅光の「奔放自在」

2025年は金利上昇局面入り?どう読み、どう行動するか

2024/12/27

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2025年の金利動向を予測し、投資家がとるべき行動を解説。日銀の金融政策の変遷、インフレ率の推移、そして米国新政権の影響まで、総合的な分析から今後の展望を示します。

2024年は、それまでゼロ金利、もしくはマイナス金利が長期にわたって続いてきた日本が、金利上昇へと舵を切った1年といえるでしょう。2016年から政策金利である無担保コール翌日物の誘導目標をマイナス圏に維持していましたが、2024年1月に0.10%に、同年7月には0.25%へと引き上げてきました。

また前述した、日銀が長期金利をコントロールするイールドカーブコントロール(YCC)も段階的に見直されてきました。

日本銀行は2022年12月に、長期金利の上限を従来の0.25%から0.5%程度に、そして2023年7月には1%に引き上げ、さらに同年10月には、この1%を一定程度上回ることが容認されました。その結果、2024年12月時点で、日本の長期金利を示す10年物国債利回りは1.03~1.07%で推移しています。

日本の金利が上昇局面へと向かった理由は、国内インフレ率が上昇に転じたからです。

消費者物価指数を生鮮食品およびエネルギーを除く総合の前年同月比で見ると、2022年3月まではマイナス、もしくはプラスだとしても1%に満たず、政府・日銀が掲げていたインフレ目標の2%には遠く届かない状態が続いていました。

それが大きく変わったのは2022年6月以降です。同月、1.0%に乗せた上昇率は、みるみるうちに上昇スピードを上げて、同年10月に2%台、12月に3%台、2023年3月に4%台に乗せ、同年7月には4.3%まで上昇し、政府・日銀が目標としていたインフレ率2%を大きく上回りました。

ここまで消費者物価指数が上昇したのは、円安によって輸入物価が上がったことに加え、ロシアによるウクライナ侵攻で資源・エネルギー価格にも上昇圧力がかかったからです。あるいはコロナ禍で多くの企業が生産を抑制させた結果、コロナ後に経済活動が正常化するなかで世界的に供給制約が高まったことも、物価上昇の一因といえるでしょう。

では、2025年の金利はどうなるでしょうか。

実は消費者物価指数の上昇率は、一時期に比べて下がっています。2024年7月のそれは1.9%でした。

ただ、そこからは再び上昇へと転じています。直近、2024年10月時点の消費者物価指数上昇率は、2.3%です。

2025年1月20日には米国大統領就任式を経てトランプ政権が誕生します。すでにトランプ次期大統領はSNSを通じて、大統領に就任した後は関税率の引き上げや不法移民の本国への強制送還などに言及していますが、いずれも実際に行えば、米国内のインフレ率が上昇します。そうなれば、FRBとしても政策金利を引き下げるのが困難になります。つまり米国の金利は高止まりします。

米国金利の高止まりは、円安ドル高を引き起こします。米ドル/円の値動きを見ると、12月3日には1ドル=148円台まで円高ドル安が進んでいたのに、そこから再び円安ドル高へと転じました。

円安ドル高は、前述したように日本にとっては輸入物価の上昇要因になります。それを抑制するためには、日本も金利を引き上げざるを得ません。現時点において、日銀は政策金利を引き上げてきましたが、それでも物価水準から見れば十分に緩和的です。少なくとも中立金利として日銀が考えている1%まで、政策金利を引き上げてくる可能性は、十分に考えられます。

今後、金利が上昇するとなれば、私たちはどう対処すれば良いのでしょうか。

本来、金利が上昇に転じるとなれば、株式をはじめとするリスク資産から確定利付き商品に資金が移動するのと同時に、住宅ローンなど借入については変動金利型から固定金利型への切り替えが進むと言われますが、少なくとも2025年に関して言えば、そこまで大きな戦略転換は必要ないと見ています。

なぜなら金利が再びゼロ水準、あるいはマイナス圏に突入するようなことは、ほぼ考えられませんが、一方で金利が米国のように4%、5%まで上昇することも、また考えにくいからです。

もちろん、そのリスクがゼロとは言えませんが、少なくとも日銀の金融政策のスタンスとして、そこまで急激な金利上昇は容認できないはずです。というのも、そこまで金利が上昇すると、国が発行している国債の借り換えを行う際に、それだけ高い金利で借金をすることになるからです。だから政府は、これだけ消費者物価指数が上昇しても、デフレ脱却宣言を行わないのです。

ひとつ懸念されるのは、国債の保有者別内訳で、海外投資家の保有比率が上昇していることです。かつては大半の国債が日本国内で消化されていましたが、2024年6月末で見ると、海外投資家の保有比率が12.7%にもなっています。仮に日本国債の格付けが大きく引き下げとなれば、海外投資家は保有している日本国債を売ってくるでしょう。その時、長期金利は大きく跳ね上がる恐れがあります。今後の金利動向を見るうえで、海外投資家の動きは注目しておく必要がありそうです。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。


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