鈴木雅光の「奔放自在」

インデックス運用vsアクティブ運用 

2025/02/21

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このところ、インデックス運用とアクティブ運用のどちらが良いのか、といった二項対立的な議論をよく耳にします。
「長期的に見れば、アクティブ運用のパフォーマンスはインデックス運用のそれにかなわない」
「インデックス運用ばかりになると価格発見機能が失われる」
「インフレ局面においては、アクティブ運用が優位になる」
といった議論が、そこかしこで行われています。
恐らく、初めて資産運用をする人からすれば、「どっちがいいの?」と悩んでしまうかもしれません。

この手の議論は今に始まったことではなく、もうこの20年くらい方々で言われていることです。その時々で、インデックス運用が有利だと言われたり、アクティブ運用が有利だと言われたりしてきました。アクティブ運用を行っている運用者からすれば、自分自身の存在意義がかかっているので、当然、「長期的にはインデックス運用に勝てません」とは言えませんし、その結果、「インデックス運用ばかりになると価格発見機能が失われる」、「インフレ局面においては、アクティブ運用が優位になる」といった自己弁護をするようになります。 

正直、これは二項対立の問題ではなく、それぞれのメリット、デメリットを理解したうえで、最終的には投資家が判断することです。 

アクティブ運用は、日経平均株価やS&P500などのインデックスをベンチマークにして、それを超えるリターンを目指します。対してインデックス運用は、ベンチマークに連動するリターンを目指して運用されます。 

このように書くと、アクティブ運用の方が有利に聞こえるかと思います。何しろ「ベンチマークを上回るリターンを目指す」わけですから。 

ただ、それを目指すのと、実際にそれを実現するのとは別の話です。 

確かに、アクティブ運用のなかには、インデックス運用を上回るリターンを実現できるものもあります。が、ファンドによってリターンのブレが大きいのも事実で、なかにはインデックス運用のリターンを大きく下回るファンドも少なくありません。平均値で見れば、アクティブ運用がインデックス運用を下回るのは事実です。 

もちろん、インデックス運用を上回るリターンを実現できるファンドを買えば良いわけですが、それを個人が所与のデータで選別するのは、非常に困難です。良い成績が期待できるアクティブファンドを選び出すためには、そのファンドの運用方針、運用哲学、リスク管理体制、トレーディング能力、運用者の能力など、さまざまな定性的優位性に加え、それらの結晶として実際の運用成果がどうだったのかという定量的優位性を加味したうえで、選び出す必要があります。それだけの判断材料を、インターネット上で探すのも大変ですし、それだけのデータは開示されていません。インデックス運用に比べて優秀な運用成績を常に上げられるアクティブ運用のファンドを個人が自分で選び出すのは、恐らく困難といっても良いでしょう。となると、次善の選択肢として、インデックス運用が浮上してくるのです。 

インデックス運用の良さは、たとえ運用者が違ったとしても、リターンに大差が生じにくいことです。インデックス運用の究極は、連動目標とするベンチマークに対して、どこまでリターンを近づけられるか、ということにありますから、運用者が違っても目指す到達点は同じです。トラッキングエラーの問題はありますが、それを加味したとしても、それほど大きな差は生じません。インデックス運用は、「外れの運用者を選んでしまう」というリスクを排除できます。 

前述したように、個人が与えられたデータを基にして、インデックス運用のリターンを常時、上回ることのできるアクティブ運用の運用者を選ぶのは極めて困難です。インデックス運用の利点は、こうした個人に不利な点をカバーできるのです。 

しかし、個人向けのアクティブ運用のプロダクトを売っている運用者は、それでもなおアクティブ運用が有利だと言いたいがために、「インデックス運用ばかりになると価格発見機能が失われる」、「インフレ局面においては、アクティブ運用が優位になる」と言います。 

確かに、世の中が全部インデックス運用になれば、価格発見機能は失われるのかも知れません。が、だからといって、それが個人投資家もアクティブ運用にしましょう、という理由にはなりません。市場の価格発見機能を有効にする役割は、個人投資家よりもはるかに大きな資金を運用している機関投資家が担えば良いだけのことです。

「そうは言っても、機関投資家が運用している資金の出どころは個人ではないか。その機関投資家もインデックス運用に傾いているのではないか」という意見もありそうですが、それはロングオンリーの伝統的運用の世界における話です。実際のところ機関投資家の運用は、伝統的運用に関してはインデックス運用の比率が上がっているようですが、同時に伝統的運用の比率が低下し、一方でオルタナティブ運用の比率を高めている機関投資家などのアセットオーナーは少なくありません。 

今後、マーケットにおける価格発見機能は、伝統的運用よりもオルタナティブ運用に移っていくのではないでしょうか。そう考えると、投資信託で運用している個人に「価格発見機能が失われるからアクティブ運用を選びましょう」というのは、いささかお門違いの議論であるように思えます。それは個人に強いるのではなく、機関投資家が担えば良いだけのことです。 

でも、「インフレ局面では、銘柄選別を行うアクティブ運用の方が有利だ」という意見もあります。が、本当でしょうか。少なくとも日本株のアクティブ運用において、それを立証できるだけのエビデンスは存在しません。 

インデックス運用の始祖は、米バンガード社の創業者であるジョン・ボーグルが1976年に運用を開始した「ファーストインデックスインベストメントトラスト」とされています。そして、日本では1985年に当時の国際投信(現三菱UFJアセットマネジメント)が設定した「インデックス・ポートフォリオ・ファンド」です。 

よく考えてみて下さい。同ファンドが設定された1985年以降、日本が本格的なインフレに見舞われたことは、一度もありません。日本経済は1991年までバブル経済を経験しますが、それは資産インフレであり、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の消費者物価指数上昇率は、高いところでも、1990年1月並びに3月の3.1%でした。そして、それ以降はほとんどの期間において、日本経済はデフレ下にありました。ということは、少なくとも日本株において、「インフレ局面ではアクティブ運用がインデックス運用よりも優位になる」というのは、全くエビデンスがない話になってしまうのです。 

エビデンスもないのに、「インデックス運用よりもアクティブ運用が優位だ」などと唱えるのは、単なる希望的観測に過ぎず、それを市場関係者の間ではポジショントークと言います。 

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。


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