2024年投資信託3大ニュース
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2024年、日本の投資信託業界は大きな転換点を迎えました。NISA制度の抜本的改革、インデックスファンドの急成長、そして運用会社の事業撤退—これらの出来事が投資の新たな潮流を示唆しています。果たして、この変化は投資家にどのような影響をもたらすのでしょうか。
2024年もあとわずか。これを機に、今年の投資信託業界における大きなニュースをピックアップしてみましょう。
その1:NISA制度の見直し
まず、NISAの制度見直しが1月に行われました。生涯非課税枠が1800万円まで拡大されるのと同時に、制度の恒久化、非課税期間の無期限化が実現しました。結果、NISAの利用者、利用額は大きく伸びました。
実際に数字を見てみましょう。日本証券業協会が11月に発表した「NISA口座の開設・利用状況」によると、着実に口座数と買付金額が増えているのが見て取れます。この数字は、大手対面証券会社5社と大手インターネット証券会社5社の合計金額なので、全体の数字ではありませんが、1月から10月までのNISA口座開設件数は約317万件で、前年の同期間である2023年1~10月の口座開設件数である約185万件に対して約1.7倍になりました。また買付額については、1~10月までで成長投資枠が約8兆円、つみたて投資枠が約3兆円で、前年同期比で成長投資枠が約4.2倍、つみたて投資枠が約3.1倍となりました。
とはいえ、注意しなければならないのは、口座件数にしても買付額にしても、増加ペースが徐々に低下している点です。
口座数の前月比は、2月が3.99%、3月が3.19%でしたが、9月は0.77%、10月は0.76%まで落ち込んでいます。同様に買付額も、2月が前月比79.17%増でしたが、3月は34.91%まで低下。その後も低下が続き、10月は7.82%となっています。
前述したように、1月から10月までの間に、口座開設件数が前年同期比で約1.7倍、買付額が約3.1倍で母数が増加していますから、徐々に増加率が低下するのは致し方ないところですが、10月末の口座数が1588万件であるのに対して、日本の20歳から64歳までの人口が、男女合わせて6828万4000人であることからすると、まだまだ伸びしろは大きいとも考えられます。少なくとも口座数は、もっと伸び率が高くても良いのではないでしょうか。その点では、制度が見直されて1年が経過しようとしている段階で、これはペースダウンなのではないか、と懸念する次第です。
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その2:インデックスファンドの隆盛
2つめの話題は、やはりインデックスファンドの隆盛でしょう。三菱UFJアセットマネジメントによって設定・運用されている「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の純資産総額が、10月28日時点で、ETFを除く公募型投資信託のなかでは過去最大の純資産総額になりました。その額は5兆7696億円で、過去において最大だった「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」の5兆7685億円を抜いたのです。
あくまでも概算値ですが、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の資金純流入額は、新しいNISAが始まる前、2023年12月の1か月間が約780億円だったのが、2024年1月が2090億円、2月が1780億円、3月が1550億円というように、毎月1000億円超の月が続いています。
これは「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」も同じで、2023年は1カ月あたり多い月で1000億円、少ない月だと300億円台だったのが、2024年に入ってからは2000億円から3000億円の資金純流入が続いています。
その3:運用会社の事業継続性
そして3つめの話題は、運用会社の事業継続性に対する関心が高まったことです。
10月11日、運用会社のひとつであるPayPayアセットマネジメントが、「運用資産の拡大が計画通りに進まず業績低迷が続いた」という理由で、来年9月に事業を終了させると発表しました。
過去、公募投資信託を運用している運用会社で業務停止に追い込まれたケースが2つありましたが、いずれも金融庁の業務改善命令に従わなかったのが主因でした。PayPayアセットマネジメントのように、業績悪化が主因で自ら事業撤退を決めたケースは初めてです。
業績悪化による事業撤退という既成事実が出来たことにより、今後、投資信託ビジネスが軌道に乗らない運用会社が、投資信託の運用から撤退することも十分に考えられます。
もちろん、運用会社が投資信託の運用から撤退したとしても、今般のPayPayアセットマネジメントのように、繰上償還だけでなく、運用ファンドの一部を他の運用会社に引き継いでもらうケースもありますが、アクティブファンドの場合、他社に運用を引き継いでもらった時点で、従前のものとは全く異なる性質のファンドになってしまいます。もちろん、表面的には同じ運用方針を継続するでしょうが、運用会社が違えば運用者も違いますし、リサーチや運用のノウハウにも違いが生じてきます。全く同じ運用を継続させることはできないでしょう。つまり運用の継続性が損なわれることになります。
確かに、運用会社が破綻したとしても、運用ファンドの資産は保全されます。しかし、運用の継続性が損なわれる問題を考えると、やはり運用会社の事業継続性はしっかり見極める必要があります。
この点については、各運用会社のサイトに財務諸表が掲載されているので、それをチェックすると良いでしょう。過去に遡って損益計算書をチェックし、明らかに業績が悪化している運用会社の利用は、避けることをお勧めします。
鈴木雅光(すずき・まさみつ)
金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。
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