“怨嗟の声。”
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“やるやる詐欺”と揶揄されていた我が国財務省がついに介入に踏み切った。
先ず第一弾はゴールデンウィーク真っ最中の昭和の日の29日月曜日午後1時頃に出た。
26日(金)に終了したゼロ回答であった日銀政策決定会合後の記者会見での植田総裁のあたかも円安容認とも取れる発言を受けて、ニューヨーク市場で円安が進み、ドル・円相場は158円台に乗せて週を終えた。
週明け29日の月曜日、午前10時くらいまでは158.20くらいで静かに動いていたドル・円相場が突然160.21迄、2円も数分で急上昇して為す術が無かったが、その後は159円台で凡そ3時間は静かであった。
そして午後1時過ぎに突然156円台まで急落し、介入が入ったことを確信した。
プライス・アクション(値動き)は強烈で、あっと言う間に158.00まで落ちた後、158.40Taken.(買われた。)、158.20Given.(売られた。)158.50Taken(買われた。)、そして158.30Given.(売られた。)と言う様に介入による無理矢理の押し下げに対して、投機筋がカウンターで買い向かうと言う凄まじい攻防が繰り広げられ、安値154.51を付けた後155円台で暫く落ち着いた後、156.34でその日を終えることと
なった。
一日の値動きは高値160.21、安値154.51で値幅は5円70銭。
まあ介入の効果としては5円くらい押し下げたと言う所か?
正確な介入額は今月末の、“平衡操作状況。”の発表を待たなければ分からないが、日銀の当座預金残高推移から推察するに約5兆5千億円分の円買い&ドル売り介入が行われた模様である。
ドル換算すると約350億ドルとなる。
財務省は介入に関しては、“ノーコメント。”を貫き、所謂覆面介入となった。
介入を行ったかどうかを明らかにしないで、市場に疑心暗鬼の心理を生み出すことを
狙っての事であろう。
ドル・円相場はその後じり高の展開となり、5月1日には高値157.98迄戻して市場では、“介入では円安トレンドを変えることは出来ない。今回の介入は失敗であった。”とのコメントが聞かれ始めた。
そして2回目の介入が行われたのは日本時間5月2日の午前5時頃、FOMC.の結果がややハト派的と捉えられて長期金利とドルが下げ基調であるタイミングを計ったように行われて、ドル円相場は157.50辺りから当日の安値である153.02迄急落することとなった。
その後ドル・円相場は急速に値を戻して156.28の高値を付けたが、今回は同じく日銀の当座預金残高推移から推察すると約3兆5千億円(ドル換算で約230億ドル)の介入が行われた模様である。
介入は通常財務省が日銀に指示を行い、日銀がAgent 行と称する銀行に対して注文を発注するが、今回は日銀が直接EBS.(Electronic Broking System.)と言う仲介システムを使って介入して直接インターバンク市場の買い注文に対して介入弾をぶつけたらしい。
だから上述の様なダイナミックな介入が出来たのであろう。
両日の合計で約9兆円(ドル換算で約580億ドル)介入したことになるが、我が国の外
貨準備は凡そ1兆3000億ドル有り、その凡そ4.5%を使ったことになるが、外貨準備の内1兆ドルが証券、つまり米国長期債券で保有しておりこれを処分する(売る。)と米国長期金利上昇に繋がるのでアメリカ側は余りいい顔はしない。
残り3000億ドルの内、介入資金として直ぐに処分出来る分の預金は約1550億ドルで、今回の介入でそれの凡そ40%弱を使い切ったことになる。
二度目の介入後、ドル円相場は一時は156.28迄値を戻したが、金曜日に発表された4月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想の+25万人を下回る+17万5千人となり、平均時給の伸びも一服した上に失業率も1ポイント悪化して3.9%となって米国雇用状況の悪化を嫌気して長期金利の低下と共にドル円も売られて安値151.86を付け
ることとなった。
月曜日から金曜日の間にドル円相場は高値160.21から安値151.86迄8円35銭下落して、さぞかし財務省はほくそ笑んでいることであろうが、更なるドル高&円安を見込んでドルのロング・ポジションを保持していた参加者からは恨み辛みの怨嗟の声が聞かれた。
彼等には悪いが、“Too bad.”(残念だったね。)としか言う事は無い。
政府・財務省は(介入をするとは言葉では言わなかったが。)“断固たる措置を取る。”、“何時でもスタンバイしている。”と言い切っていた事を実践しただけだ。
介入でドルが下がり、ドル・ロングでやられたのであれば、それは自己責任としか言い様が無い。
金曜日の介入無しでの151円台へのドルの下げは恐らくシカゴ・IMM.の投機筋がついにタオルを投げて損切り(一部か全部かは分からない。)を行ったのではなかろうか?
彼らのポジションは1回目の介入直後の4月30日付けの数字しか分からないが、円を多少買い戻したものの依然として168,388枚の円のショート(約135億ドルのロング)ポジションを保持していた。
我が国個人投資家のポジションは昨日発表されたが、何と前週の約10億ドルのショート・ポジションから約14億ドルのロング・ポジションに転じているではないか?
ネットで24億ドル買ったことになる。
彼らは第一回目の介入翌日の4月29日からロングに転じており、当日の終値は156.34。
その後第二回目の介入でドル・円相場は151.86まで下落しており、さぞかし肝を冷やしたことであろう。
ドルが上がって困り、ドルが下がって困る状況では恨み辛みが出ても仕方ないか?
今回の2回の介入は筆者にとっては極めて自然なことだと理解しているのだが、市場参加者の一部は依然として介入の効果には懐疑的で、批判さえ聞こえてくる。
8円35銭も下がれば介入は極めて効果的であったと筆者は考えるが、問題は“これからどうする?”である。
直ぐに処分出来る介入資金はあと約970億ドルで先週と同じ規模の介入を行うとするとあと2~3回か?
ところでイエレン米財務長官がアリゾナでの講演の後、記者団に日本の通貨当局が円買い介入を行ったかどうかについては言及を避けたが、週の円相場の動きは急激だったと認めた上で、“介入の有無についてコメントする積りは無い。介入は噂だと思う。但し介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される。”と述べたが、その真意が分からない。
はっきり言って、イエレン米財務長官が今回の介入を事前に知らされていなかったとは考えにくい。
我が国政府・財務省は介入についてノーコメントを貫き、カウンターパートと言うき米財務長官も介入は噂だととぼける。
今回介入が無ければ恐らく今頃は165円を超えて170円をも伺う展開となっていたかも知れない。
その意味では極めて有効であったことは間違い無いが、ゴールデンウィーク以降、連休明けの輸入決済の為のドルの手当てが進んで現在ドルは堅調地合いで推移している。
これからの相場展開であるが、我が国政府・財務省は具体的なレベルを守ろうとするのではなく、先々週の様な急ピッチの円安進行は止めたいのであろう。
筆者の個人的な考えは、彼らは150円以下に無理に押し下げ介入をする積りは無く、再びドル円相場が157円とか158円に上がる様であれば介入に出るのではなかろうか?
“もし介入が出れば?”、“もし介入が出なかったら?”と言う“たられば。”で取引を続けるのは辛いが、仕方無い。
介入が出た場合の値動きが大きいので、よりそちらに警戒するポジショニングが肝要か?
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