火の手が上がった中東の要衝
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韓国での突然の戒厳令発令・撤回の茶番劇には驚かされたが、暮れも押し迫っての欧米の関心事はもっぱらシリアのアサド政権の崩壊のようだ。ひとつ間違えれば中東全域の大混乱に繋がりかねない大事件だからである。
欧米メディアの報道によれば、7日から8日の未明にかけて、バッシャール・アサド大統領は側近や親族にも告げず密かに首都ダマスカスから西部のロシア空軍基地に移動しモスクワへ向かったという。妻子はすでにモスクワへ逃亡しており、アサドを出迎えた。
今回のシリア反政府勢力による政権転覆によってアサド家による半世紀におよぶ凄惨な圧政はあっけなく終焉した。だがこれからどうなるのか今のところ誰にも分からない。
ただ、少なくとも中東の勢力図を激変させた1979年のイラン革命に匹敵する大事件であることだけは間違いないだろう。
イラン革命では、アメリカを「大悪魔」と敵視するホメイニ師が率いるイスラム原理主義勢力が親米・独裁のパフラヴィー王政を打倒。その結果、アメリカや西側諸国との関係が悪化し、影響は今も地域に色濃く残っている。
今回のアサド政権崩壊の場合は、ウクライナ戦争とイスラエル・パレスチナ戦争の影響が顕著だ。
2011年の中東や北アフリカを巻き込んだ民主化運動「アラブの春」によって追い詰められたアサド大統領を支えてきたのは強固な同盟関係を築いてきたイランとロシアだった。
イランはアサド政権存続の為に多くのの兵士を派遣し、数十億ドルを費やしたとされている。しかし、昨年10月から続くイスラエルとハマスやヒズボラの戦闘でイスラム武装勢力が劣勢に立たされており、イランはアサドを支えきれなくなっている。
一方、アサド大統領支援のために数千人の部隊を派遣し、シリア内に空軍基地と海軍基地を49年間使用する権利も得ているロシアも泥沼化したウクライナ戦争でシリアまで手が回らないというのが実情のようだ。
今回の政権転覆の背景にはトルコとアメリカが反政府勢力を支援してきたこともある。13年間のシリア内戦の間、トルコは反政府勢力に武器や政治的支援を提供することによってクルド人民武装組織を封じ込めようとしてきた。さらにトルコは国内に居住するシリア難民約300万人の帰還を望んでいる。
アメリカも「アラブの春」以来、シリアの反政府勢力に軍事支援を提供し、2014年にはイスラム国(IS)と戦うために軍事介入した。アサド政権崩壊後、バイデン政権は不安定な情勢に乗じたISの攻撃を阻止するためにシリア中部のIS拠点に対して数十回の空爆を実施したと発表している。
しかし1月に就任するトランプ大統領はシリアにアメリカは関与すべきではないと主張している。不安定要因のひとつだ。米国は現在シリア北東部を中心に約900人の兵士を派遣している。
さらに注目はイスラエルの動向だ。反政府勢力がアサド政権を打倒して以来、イスラエルはシリア全土の軍事インフラ、海軍艦隊、武器生産施設などに対して数百回の攻撃を行ってきた。武器が「過激派の手に渡る」のを防ぐためだというが、それは表向きの理由にすぎない。
狡猾な戦略家であるネタニヤフはアサド政権崩壊と知るや否やイスラエルとシリアの国境に「新たな戦線が開かれた」としてゴラン高原の非武装緩衝地帯を制圧した。さらにシリア国内で自国の部隊が作戦行動を行っていることも認めている。ゴラン高原には30以上のイスラエル入植地があり、推定2万人が暮らしている。
アサド政権転覆で威信を傷つけられたロシアは影響力維持のためシリアで実権を握りつつある反政府武装勢力HTS(ハイアット・タハリール・アッシャーム、シリア解放機構)の代表者と接触している模様だ。アメリカと複数の西側諸国はHTSを今もテロ組織に指定されているが、米政府もHTSと直接接触したことを明らかにしている。
地政学的要衝シリアに突然できた巨大な「勢力の空白」を巡って各国の激しい駆け引きが始まっている。
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