果たして神は誰を選ぶのか
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「神が私を救ったのだ!」
世界に衝撃が走った前アメリカ大統領暗殺未遂事件のわずか5日後、東部ペンシルベニア州で行われた共和党全国大会での生中継演説に現れたトランプはいつになく穏やかな調子でそう聴衆に語りかけた。
銃弾がかすめた右耳を白いガーゼで覆った姿は痛々しく、さながらテレビを通じて数千万人の視聴者を引きつけて保守層を支えるキリスト教福音伝道師だったビリーグラハムを思わせる話しぶりだった。
「私はアメリカの半分ではなく国全体の大統領になるために立候補している。半分のための勝利は勝利ではない」と融和色を前面に押し出した。アメリカを分断した張本人はお前だろうと思わず突っ込みをいれたくなるほどの変身ぶりだ。
その姿はまるで1851年に米画家ロイツェによって描かれた油彩画『デラウェア川を渡るワシントン』の現代版のようだとブルムバーク通信記者が書いていた。独立戦争中の1776年末にジョージ・ワシントンが大陸軍を率いてデラウェア川を渡りドイツ人傭兵隊を攻撃する様子を描いた作品のことだ。この戦いが独立戦争の大きな転機となり、ワシントンは後に初代アメリカ大統領に選ばれている。
つまり、今回の銃撃事件が流血の連邦議事堂襲撃の加害者であるトランプが被害者にすり替わり、一夜にして「神の啓示」を受けたアメリカンヒーローになってしまったと言っているのだ。
死の瀬戸際を経験すると人は変わるといわれる。若い頃からトランプは相手を敵とみると容赦なく卑劣な攻撃を繰り返し、平然と嘘をついてきた。だがトランプも九死に一生を得て寛容な指導者に変身したのか。
そんなわけがない。
これまでペテン師も舌を巻く嘘八百と脅しで最高権力者にまで上り詰めた78歳の“rogue”(ならず者)の性根がそう簡単に変わるはずはない。今回かすり傷で済んだ銃撃は選挙戦で支持者や同情票をがっちり掴む千載一遇のチャンスだと内心ほくそ笑んでいるに違いない。
その証拠に演説の後半はいつもの激しい口調にもどってバイデン政権をこき下ろし、世界を混乱に陥れる陰謀論を繰り返した。
今回の事件はまさに大統領選の「ゲームチェンジャー」だ。
現職のバイデン大統領は先のテレビ討論会で精彩を欠いて「高齢と認知」不安を感じさせたうえ、7月7日には新型コロナに感染したことが発表されている。症状は軽いというがまさに弱り目に祟り目だ。大口献金者も民主党かれ離れていっている。
お陰であなたや私を含めた世界中の善良な常識人がトランプ復活の悪夢に苛まれることになった。
もっともトランプがこれで楽勝かといえば、それはわからない。選挙は水物。11月5日の投票日までにはまだ3カ月余りあり、何が起きても不思議ではない。それに81歳のバイデンが次期大統領にふさわしくないことは、トランプがふさわしいということを意味しないからだ。
ではどうすればトランプ再選を阻止できるのか。
「川を渡るときに馬を代えてはいけない」と言ったのは1963年のジョン・F・ケネディ暗殺後に大統領を引き継いだジョンソン大統領だが、今回ばかりは馬を代えた方がいいかもしれない。
最有力候補は副大統領のカマラ・デビ・ハリス副大統領だろう。人気がないと言われてきたハリスの支持率はこのところ急上昇。最新の世論調査では、バイデンがハリスと次期候補に指名した場合の彼女の支持率はバイデンより高い42%。トランプは43%で拮抗している。
50歳代と若いハリスはバイデンよりも勝利の条件がそろっている。まず女性候補で非白人。黒人や女性、ヒスパニック、アジア系の有権者の支持を得やすい。元カリフォルニア州司法長官で頭が切れ弁もたつ。先日スイスで開催されたウクライナ平和サミットにホワイトハウスを代表している。さらには大統領が集めた多額の選挙資金(約400億円)を引き継げる。
ハリス勝利のポイントは副大統領候補選びだ。50代の白人男性、例えば56歳のカリフォルニア州知事のギャビン・ニューサムやイリノイ州知事のプリツカー知事(59歳)を選べば支持層が広がる。ハリスに火中の栗を拾う勇気があるかどうか。
バイデンがハリスを後継に指名した今、8月19日から22日に行われる民主党全国大会まえに民主党大領候補をハリスに一本化して逆転勝利を目指せるかどうかだ。
トランプのモットーはキリスト教やユダヤ教の教えとは真逆の「やられたら絶対にやりかえせ(get even)」である。さて、この3ヶ月でどう変わるのか。
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