オッペンハイマーは何を思う
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米国が広島・長崎へ原子爆弾を投下してから78周年の今年、不安な世相を映すように先月公開されたクリストファー・ノーラン監督の映画『オッペンハイマー』が米国をはじめ世界各国で大ヒットしている。興行収入はすでに4億ドル(約572億円)を超えたそうだ。
内容は第2次世界大戦中に米陸軍による原爆開発計画「マンハッタン・プロジェクト」のリーダーで「原爆の父」と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマーの栄光と苦悩の半生を描いたもの。核兵器への不安が現実に世界で高まっている今、関心が集まるのは当然といえば当然だろう。
不安を掻き立てているのは2022年2月にウクライナ戦争を始めたロシアのプーチン大統領と周辺の強硬派たちだ。人類の存続そのものを脅かしかねない核兵器使用をほのめかしてウクライナや北大西洋条約機構(NATO)加盟国に脅しをかけている。さらに今年に入って、最後まで残っていた米ロ核軍縮の枠組みだった新戦略兵器削減条約を反古にし、隣国のベラルーシに戦術核兵器を配備した。
だが核の恐怖はそれだけではない。米ロ英仏中の5大核保有国のうち中国以外は核先制不使用を宣言していない。といっても中国が核軍縮に積極的なわけではない。核戦力で中国に勝る米ロに対して先制不使用宣言を外交カードとして利用しながら自国の核戦力を急速に強化しているのが実情だ。
幸いなことにこれまで核戦争は一度も起きていない。広島・長崎で目の当たりにした核の破壊力と放射能の恐怖に世界が慄き、独裁者といえども人類消滅につながりかねない核ボタンを押せないからである。
ところが恐ろしいことに技術の進歩で小型化、高性能化が進み、今では一国を破滅させるのではなく局地的な戦闘で使える射程500キロ以下で威力も制限された「戦術核兵器」が存在している。それはとりもなおさず核による先制攻撃のリスクが高まったことを意味している。そんな物騒な核兵器を米国の150発に比べてロシアは1800発余りも保有している。
しかも戦闘が局地的だという保証はない。プリンストン大学で行われたシミュレーションでは、ロシアが戦術核1発を発射するとわずか1時間以内に全面的な米ロの核の打ち合いにエスカレートし、4400万人の死者と5700万人の負傷者が出るという結果となった。
現実には核の脅威が減るどころか、「使えない」から「使える」核兵器というより危険な形に姿を変えただけなのだ。
製作者の芸術的選択なのか、はたまた国内向けの政治的配慮なのだろうか、映画『オッペンハイマー』では広島・長崎の惨状がまったく映し出されていない。原爆のリアルが伝えられていない。しかし1945年7月16日、ニューメキシコ州の実験場で世界初の原爆の凄まじい威力を目撃したオッペンハイマーはインドの聖典「バガバット・ギーター」の一節を思い起こしたという。それは「われは死なり、世界の破壊者なり」という言葉だった。人間の愚かさ罪の重さに気づいた瞬間だったのだろう。
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