ノルドストリームの怪
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事実は小説より奇なりという。それにしてもなんとも不可思議な話だ。
ウクライナ戦争の最中の昨年9月、バルト海の海底をロシアからドイツまで走る天然ガスパイプラインが何者かによって爆破されるという大事件が起きた。しかし、その後賢明の捜査が行なわれたにも拘わらず、半年近く経った今も誰の仕業か分からないという。
ところが「あれはアメリカ政府の仕業だ」と仰天ニュースが今月始め流れた。暴露記事をブログで公開したのはアメリカのシーモア・ハーシュ記者だ。
ハーシュ記者といえば私の世代のジャーナリストにはお馴染みの人物である。かつてベトナム戦争時の米兵によるソンミ村虐殺事件など数多くのスクープを物にしてピュリッツァー賞も受賞した大ベテラン調査報道記者である。御年84歳でまだ現役だ。
この報道が事実なら、ロシアや同盟国ドイツの資産にアメリカが「テロ行為」を行なったことになるから深刻だ。バイデン政権がそんな危ない橋を渡るだろうか。
米政府はもちろん「完全なでっちあげだ」として否定した。一方、ロシア側は激怒して真相の解明を要求している。そりゃそうだろう。事件発生直後はマスコミも専門家もウクライナ戦争で悪役のロシアの仕業に違いないと疑ったからだ。先入観は恐ろしい。
よく考えてみれば、ロシアにとって莫大な利益をもたらすノルドストリームというパイプラインを破壊してもなんの得もない。
私もさっそく記事を読んでみた。まるで冷戦時代のスパイ小説を思わせるような詳細な内容で興味をそそられた。
昨年6月、北大西洋条約機構(NATO)は加盟を申請しているスウェーデンとフィンランドとともにバルト海で大規模な軍事演習を行なった。その際にフロリダで養成された米海軍の深海ダイバーたちが爆発物を仕掛け、米国が疑われないようにその3ヶ月後に遠隔操作でパイプラインを破壊したというのだ。特殊部隊ではないというところがポイント。アメリカでは海軍が単独で行動した場合議会への報告が不要である。
命令を下したのはもちろんバイデン大統領だという。ホワイトハウス、国防総省、中央情報局(CIA)が関与し、ノルウェー政府と軍が協力した。
ロシアが大軍をウクライナ国境に終結させる中、バイデンはロシアのプーチン大統領がパイプラインを使って天然ガスを「兵器化」することを恐れていたという。欧州諸国のロシア依存が高まる一方で米国との同盟に亀裂が入るからだ。
計画は2021年末から昨年初めにかけてサリバン国家安全保障補佐官を中心に、ホワイトハウスに隣接する古びたアイゼンハワー行政ビルの一室で秘密裏に練られたという。
海軍は潜水艦によるパイプライン攻撃を、空軍は時差爆弾の投下を提案したが、「米国だと知られずパイプラインを爆破する方法がある」というCIAの案が採用された。
まるで米小説家トム・クランシーが書いていた米ソ対立の冷戦時代に逆戻りしたようではないか。(ちなみにクランシーのベストセラー『レッドオクトーバーを追え』のモデルになったソ連の巨大戦略原潜の内部を初めて取材した西側テレビジャーナリストは私だった。)
ただ、気にかかることがある。それはハーシュの情報元が「この極秘作戦を直接知る匿名の人物」だけだということだ。それに記事の内容を精査すると時系列などいくつかの矛盾点がある。信憑性が低い。なんらかの情報操作に乗せられたか、あるいは彼自身が功を焦ったのだろうか。
では、パイプラインを破壊したのがロシアでもアメリカでもないとすれば、いったい誰の仕業なのか。合理的に考えれば、ウクライナかもしれない。ロシアの資金源にダメージをあたえ、ロシアが天然ガスを武器に欧州諸国の分断を図ることも阻止できる。
米国やNATOから強力な武器支援を受けている今のウクライナなら海底での爆破工作も可能かもしれない。
もちろんこれは単なる推測だ。裏付ける証拠はない。事件の真相はまだ謎のままだ。古代アテネの三大詩人のひとりアイスキュロスはこんな言葉を残している。
「戦争の最初の犠牲者は真実である」
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