中国の先祖返り
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21世紀は1979年から始まった。
そう言うと首を傾げられるかもしれない。しかし同年に起きた出来事を振り返るとその意味が納得していただけると思う。
振り返れば、同年に立て続けに起きた政治経済的地殻変動は今私たちが生きている21世紀を方向づけているからだ。
振り返ってみれば、その年の1月に米中が国交を樹立した。4月にはイランでイスラム革命が起きて世界でのイスラム教の影響力が急速に拡大。5月には「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャー女史が英首相に就任し、現在の深刻な経済格差を生む結果となった新自由主義経済を推進した。
さらには、6月のヨハネ・パウロ2世教皇のポーランド訪問がその後の共産主義体制崩壊のきっかけにもなった。一方、中国では最高指導者だった鄧小平が「白い猫でも黒い猫でもネズミを捕ってくるのがいい猫だ」という発言で知られた「改革開放政策」に着手。それが同国を世界第2位の経済大国にまで成長させた。2028年にはGDPで米国を抜くだろうと予測されている。
つまり、1979年は社会主義体制が影を潜め、宗教の政治化が始まり、市場経済が台頭した画期的な年だったのだ。私が米「TIME」誌特派員だったときにライバル誌だった「Newsweek」の東京支局長も務めたジャーナリストのクリスチャン・カリルがそのことを著書『STRANGE REBELS』で詳細に分析している。
しかしこのところ専制色が一層強くなった習近平体制の中国では今、そんな時代の大きな流れに逆行する共産主義への「先祖返り」が急ピッチで進行している。「共同富裕(貧富の差を減らしてすべての人が豊かになること)」の旗印の下、市場経済で膨れ上がった企業を半国有化して共産党の指導下に置こうとしているのだ。毛沢東から始まった革命の道へ逆戻りである。
スローガンは「共同富裕(貧富の差を減らしてすべての人が豊かになること)」。市場経済導入で野放図に膨れ上がった民間企業を準国有化して共産党の指導力を強め、富の再配分をするとともに、人口減少という深刻な中長期的問題にも対応できるようにしようというのである。
手始めは野放図に巨大化したIT企業だった。アリババ、テンセント、バイドゥ、バイトダンスなどのプラットフォーマーが狙い撃ちされた。隆盛を誇ったアリババの創業者ジャック・マーでさえ突然公の場から姿を消したくらいだ。国家首脳並の派手な外遊や中国当局批判ともとれる発言が習近平総書記の逆鱗に触れたようだ。
これで約90兆円の富が吹き飛んでしまったが習近平総書記は弾圧を緩めようとはしていない。国家に従わないものは絶対に許さないという姿勢なのだ。
続いて起きたのは、リーマンショックの再来かと世界が肝を冷やした中国の不動産大手、恒大集団の経営危機だ。
恒大集団は苦学生で鉄工所の技術者だった許家印氏が弱冠39歳で創業した不動産会社で、「永遠に拡大する」というその社名どおりに急拡大を遂げ、2020年のグループ売上高8.6兆円、従業員20万人、取引先8000社を超える世界でも指折りの巨大複合企業に成長した。
ところがその栄華の裏で負債総額が34兆円近くにまでに膨れ上がり、理財商品(高利回りの財テク商品)の償還が滞ったことをきっかけに破綻の崖っぷちに立たされている。債務不履行となれば国内の金融機関、投資家、不動産業者のみならず中国に投資している海外投資家も巨額損失を被ることはまぬがれない。
だが中国政府は、経済成長最優先の鄧小平モデルが生み出した不動産バブルの原因企業や理財商品であぶく銭を手にした個人投資家を容赦なく罰しようとしている。
「不動産市場で若干の問題が起きているが、リスクは管理可能だ」と劉鶴副首相は強調した。混乱は強権で押さえ込めばいいというのが習近平総書記の発想だ。早ければ、年内に破綻処理に入り、資産処分を経て国有企業化されるだろう。
恒大危機を回避した後は、来年の北京冬季五輪を成功させて秋の共産党大会で独裁体制を強化することを目論んでいるのだろう。「共産党、人民解放軍、中華人民共和国」の3つの権力を掌握した習総書記は、「脱改革開放政策」とともに外交や軍事面でさらに高圧的な姿勢を強めていく。その延長線上に悲願の台湾統一があることは間違いないだろう。
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