欧州を牽引した女帝
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いよいよ女帝が表舞台を去ることになった。
と言っても虚飾の物語満載の小池百合子東京都知事のことではない。
歴史に翻弄されながら「世界で最も影響力のある女性」として欧州の舵取り役を務めてきたドイツのアンゲラ・メルケル首相(67歳)のことである。ドイツ史上初の女性リーダーとして15年以上も首相を務めてきた彼女が10月に政界を引退する。
「あなたとこうして会えなくなると思うと寂しい。心の底からそう思う」
メルケル氏のおそらく最後のホワイトハウス訪問となった7月15日の首脳会談後の記者会見で、バイデン大統領は彼女にそう優しく話しかけた。「あなたはずっと大西洋同盟の熱烈な擁護者だ」との賛辞と共に。
単なる社交辞令だと捉える方も多いだろう。しかし、ベテラン政治家同士としてお互いに胸に去来する思いがあったのではないかと私は推測する。
2017年の連邦議会(下院)選挙で4選を果たしたメルケル氏だったが、与党・キリスト教民主同盟(CDU)の得票数が大幅に減少し議席を減らしたことに加え健康上の不安から引退を決意したという。近年になって身体が震える発作におそわれることが幾度もあった。
大量の難民流入など深刻な問題から極右政党の台頭も許してしまったメルケル政権だが、多くのドイツ国民は彼女の揺るぎない中道路線、人道主義、安定感を今も支持している。
ナチス犯罪という忌まわしい過去と国際協調にゆれたドイツは、冷戦後に一国主義から国際協調主義にシフトし、過激なイデオロギーや非人道的行為を厳しく批判してきた。背景にはその政策を支持する国民と祖国に対する誇りと愛がある。それを支えてきたのが非凡なリーダーであるメルケル氏なのだ。
北朝鮮にミサイルを発射された途端に政府もメディアも国民も慌てふためいて国防を語り先制攻撃もやむなしなんて議論が噴出したり、オリンピック開催のためなら国民の命もないがしろにする日本とは正反対だ。臨機応変の政策を打ち出すが思考の軸がぶれないのである。
メルケル氏は1954年、ドイツ北部の経済の中心地ハンブルグで生まれた。父は福音主義教会の牧師で、母はラテン語と英語の教師だった。しかし生後間もなく父が東ドイツに赴任することになり、その後は1990年の東西独統一によって東ドイツが消滅するまで東の抑圧的な社会の市民として生きるという異色の経歴の持ち主となったのだ。
学生時代は、運動神経は別として、成績は飛び抜けて優秀で大学入学試験の成績はオール満点だったという。とくに理数系が得意で物理学者になる道を選んだ。記憶力も抜群だったという。語学も得意で、ロシアのプーチン大統領が首相となったメルケル氏と会談をした際に彼女のロシア語があまりにも流ちょうで舌をまいたという逸話も残っている。
ファッションやヘアスタイルには無頓着で面白みのない優等生の「リケジョ」のようだが、案外おちゃめなところもあった。彼女のものまねの十八番はプーチンだそうだ。しゃべり方だけでなくロシア大統領の左右に身体を揺すって歩く真似も上手いらしい。
ベルリンの壁が崩壊したという世紀の大ニュースを聞いてもサウナでのんびり汗を流していたという話しも有名だ。結婚4年後に離婚した彼女には子供はいないが、国民からは親しみをもって「ムティー」(お母ちゃん)と呼ばれている。
メルケル氏の政治手法は物理学者らしく「熟慮・英断」だ。まず実現可能な成果を想定してから物事を慎重に進め、決断は早い。その思考法でこれまで幾多の試練を乗り越えてきた。さらには、社会主義独裁体制下の監視社会旧東ドイツで育ったことで、交渉相手の本心を見抜く能力も鍛えられた。つまりタフ・ネゴシエーターなのである。
私が以前に東京特派員を務めた米国ニュース週刊誌『タイム』は、2015年のパーソン・オブ・ザ・イヤー(時の人)にメルケル氏を選出している。「道徳が欠乏している世界にあって、確固たる道徳の指導力を発揮した」というのが理由だった。リーダーシップとは突き詰めれば人類への奉仕なのである。
日本の総理は総じて奉仕の精神が足りない。
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