今再び「Brexit」の混乱
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世界的な新型コロナ危機と米大統領選後の成り行きに注目が集まる中、もうひとつ経済混乱の火種が大きな山場を迎えている。欧州連合(EU)とEU離脱後の英国との将来協定交渉だ。交渉期限が今月末に迫っているのに自由貿易協定(FTA)の内容などを巡って両者の溝が埋まらないため、このままでは「合意なき離脱」の可能性が高い。
「英国はEUの規制の中に閉じ込められることなどできない!」と傍若無人英国の独立性を最優先するボリス・ジョンソン首相は強引にEUの譲歩を迫っている。対するフォンデアライエン欧州委員長は端正なルックスだが、医学博士号を持ちドイツのメルケル政権下で初の女性国防大臣を務めた豪腕。「公正な競争環境を守ることが世界最大の単一市場にアクセスする条件です」ときっぱり英首相の要求を突っぱねた。
それでも本音では両者とも交渉決裂を望んではいない。だからこれまで何度も期限を先送りして話し合いを続けてきたのだ。だが今回は期限切れまで秒読みの段階だ。「合意なき離脱」となれば、関税が上がったり物流の停滞が起きるなど欧州経済だけでなく日本企業への悪影響も避けられないだろう。
土壇場で交渉が難航している理由はふたつだ。ひとつは「英国周辺海域の漁業権」。もうひとつは「公正な競争条件の確保」である。ジョンソン首相は離脱移行期間が終了後には英国周辺の漁業海域の管理権を取り戻すと主張して譲らない。
一方、フランスやオランダなどEU加盟国はこれまで通りの漁業権維持を要求している。英国近海はサバやタラなど豊かな漁場だからだ。「いかなる場合でも、(EU加盟国の)漁師を離脱の犠牲にしてはならない」とフランスのマクロン首相はとくに鼻息が荒い。
ジョンソン政権も負けてはいない。通商協定が結べなければ漁業水域に砲艦を派遣する用意があると脅かす完全な「戦闘」モード。さすがにこれには国内からも「みっともない」との声が上がっているが。
公正な競争条件については、規制緩和を進め企業の自由競争を促進するのが英国の方針だ。ところがEU側は英国の環境、労働、税制、政府補助金などに関する規制をEUと同等の水準にすることを求めている。英国が一方的に規制を緩和し安価な製品を輸出するようになればEU域内企業が不利になるからだ。そもそもEU27加盟国が自分たちに不利になることを覚悟で英国だけに特別待遇を与えることなどあり得ない。英国産業界からもジョンソン首相の高姿勢には批判の声が上がっているくらいだ。
しかし、ジョンソン首相が敬愛する政治家はたったひとりで歴史を変えた英宰相ウィンストン・チャーチルだ。チャーチルは、誇り高き大英帝国は「欧州と共にあるがその一部ではない」と英国の独立性を明言していた。ジョンソン首相は自分がそんな「イングシック・ナショナリズム」の継承者だと自負している。そう簡単に妥協するわけにはいかないのだろう。
ところが厄介なことが起きた。個人的に意気投合していたトランプ大統領が米大統領選で民主党のバイデン候補に敗れてしまった。バイデン氏はジョンソン首相が大嫌い。「体つきも考えもトランプのクローンだ」とこき下ろしている。それだけではない。ジョンソン首相の親中国、反EU政策に対して米民主党からも反発の声が上がっている。バイデン新政権が対中強硬路線をとれば、中国との経済的関係強化で「合意なき離脱」を乗り切ろうというジョンソンの思惑が外れてしまう。
脅威のスタミナと決断力で英国をナチスの侵攻から守った生前のチャーチルはときに下品でジョーク好き、目立ちたがり屋のデブの嘘つき男などと罵られたこともあった。だが彼の庶民的なジョークは戦禍で怯えている国民を笑わせ勇気づけた。大英帝国の歴史的栄光を胸に秘めるジョンソン首相も下品でジョーク好き。だがスタミナと決断力はとてもチャーチルの足下にも及ばないだろう。さてどうするか。これからが見物だ。
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