香港と台湾の心模様
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蟹瀬誠一コラム「世界の風を感じて」は、10月蟹瀬さんが多忙を極めたため更新がずれ込みました事をお詫びします。(編集部)
暮れも押し詰まった2015年12月末、中国の習金平主席が北京を訪れた梁振英行香港行政官(当時)に告げた言葉は次のようなものだった。
「一国二制度を確実に実施し、変形し、姿が崩れることのないよう堅持する」
ところが4年近く過ぎた今、香港の反政府デモは炎のように燃え続け、来年1月の台湾総統選挙の姿まで変えようとしている。
総統選投票日まで4ヶ月を切った10月半ば、有力候補とみられていた著名実業家で親中派の郭台銘氏が突然不出馬を表明。一方、対中強行派の現総統蔡英文氏は、香港デモが追い風となって、最新の世論調査で支持率トップに躍進している。予期せぬスキャンダルでも吹き出さないかぎり、蔡氏の再選は確実だろう。
蔡総統の勝利は習主席にとっては新たな挫折となる。長引く米中貿易戦争や香港反中デモによって国内で不満が高まっている中、最重要の政策課題である台湾統一が遠のくことは失策以外の何ものでもないからだ。いくら2年前に憲法を改正して国家主席の任期を撤廃し全権を掌握したといえども、心中穏やかではないだろう。
もともと香港の一国二制度は、中国が台湾統一のために考え出した方式だ。
英国の植民地だった香港が中国に返還されたのは1997年。最高指導者だった鄧小平が、サッチャー政権に対して中国市場参入というエサをぶら下げつつ軍事介入もちらつかせて香港を奪い返した。その条件には、返還後50年間は香港では社会主義の中国と異なる民主的な制度を維持することが約束されていた。じつはその裏で中国は香港を実験台にして台湾統一にうまく繋げようと目論んだのだ。
ところが目覚ましい経済発展を遂げた台湾はそんな制度には目もくれなかった。それどころか2000年には反中の民進党が政権を握り独立志向が強まったのだ。その後、親中派の馬英九政権が誕生してしばらく両者の距離は縮まったが、3年前から民進党政権に逆戻りしている。
背景には1949年の国共内戦以降中国とは別の政治体制下で暮らしてきた台湾の人々の中に「私たちは中国人ではない、台湾人だ」という意識が広がっていることがある。同時に香港でも中国離れが起きている。香港人の大半は自分たちを中国人だとは思っていない。香港大学が行った2017年の調査によれば、若者(18歳から29歳)のうち自分は中国人と回答したのはわずか3%だった。
中国政府に対する先行き不安と恐怖が今日の台湾と香港の人々の心を繋いでいることは間違いない。BBCの報道によれば、インターネットで香港のデモの様子を追っていた台湾の若者が教会で募金を呼びかけ香港のデモ隊にガスマスクなどの物資2000個以上を送ったという。連帯感の現れだろう。
その一方で中国当局による台湾総統選に対するサイバー攻撃や台湾海峡でのミサイル実験も危惧されている。年明けに北京で行われた年頭演説で習主席は平和統一が基本だが「外部の干渉や台湾独立勢力に対して武力行使を放棄することはない」と明言した。台湾海峡も波高しだ。
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